アメリカ経済はもうダメなんじゃないかと思う今日この頃
アメリカはまだ公式には景気後退入り(Recession)を認めてはいない。でも、各種経済指標からは既に景気後退入りしている可能性が高いことが読み取れる。
で、今回の景気後退は従来のそれとは一味違うらしい。
昔は景気上昇→設備投資増加→過剰生産→余剰在庫発生→減産・雇用調整という流れがあって、その雇用調整の結果、消費が低迷。そして住宅ローンを払えない世帯がでてきて、住宅市場の調整が入ってから底打ちへ、という感じだったらしい。
今回の場合は2002年にブッシュが提言した「Home Ownership Campaign」に始まる住宅ブームが景気を引っ張ってきた、という点が大きく異なる。2000年のネットバブル崩壊と2001年の同時多発テロで散々だった米国経済を立て直したのは、住宅セクタを中心とした一連の産業だった。建設業者、金融機関、建設機器、輸送機器、家具・家電などなどの分野で雇用機会が提供された。製造業部門を海外に頼りがちな(というか、海外に太刀打ちできない)米国では住宅・金融・サービス部門で雇用を確保するしか道はなかったのだ。
そして「持ち家率」が上昇した結果の資産効果も大きかった。持ち家評価価格が上昇した分を担保にお金を借りる「ホームエクイティローン」。 使い道はいろいろあったろうけど、自動車などの大物消費を支えていたのは事実。
だけど、その住宅ブームは崩壊を迎えてしまった。結果として、以下の状況が生まれている。
- 有り余る住宅在庫。→カリフォルニアは特に深刻で、向こう4年分以上の在庫を抱えている。
- どんどん下がる住宅市場。→これが新たなForeclosureを生み、ますます住宅在庫は増える。
- ローンを払えず、家を手放した人達。→この人たちは信用履歴が回復するまで家を買うことはないであろう。
- 住宅市場崩壊で職を失った人達。→この人たちも住宅在庫供給元となりうる。そして当面は家を買えそうにない。
- ホームエクイティローン縮小に伴う、消費減退。→ブッシュ減税分は一瞬で消える計算。
- 金融機関の財務悪化。→貸し渋りという形で消費を引っ張る。
- 住宅税や消費税減収に伴う、地方財政の悪化。→将来の増税要素。公共部門での雇用機会も減る。
こんな状況下ではあるが、「住宅市場を回復させ」「雇用を増やし」「消費を向上」させないと景気は回復しない。でもそれって可能なのか?
住宅市場
MishのCase Shiller Futures Suggest 2010 Housing Bottomでは、2010年底打ち説と2012年以降底打ち説を比較している。
住宅ブームが景気を支えてきた以上、その逆転過程では景気後退が深刻化するのは当然。そして、その景気後退は今我々が想像している以上に深刻かつ長期化するというMishの主張が正しいのではなかろうか。つまり、当分はダメと。
雇用
そして住宅ブームが提供してきた雇用機会を、どこの部門が吸収できるのだろうか?
見落としがちなのが「イラク」。仮にオバマが政権を取ったら、イラク駐留の規模を縮小させるのは確実。
でも、帰ってきた兵隊さん達に仕事はあるの?
消費
そして消費。住宅ブームの間はホームエクイティローンを使って、派手な生活を謳歌していた人達がいた。中産階級でも高級車乗り回せたし、キャンピングカーとかボートとかの大物消費もできた。そのホームエクイティローンが断ち切られた今、残るはクレジットカードのみ。彼らには貯金という概念なんかない。貯金箱の代わりが「値上がりするはずだった」家だったわけだ。
そのクレジットカードも金融機関のレバレッジ解消のとばっちりを受けて、与信枠が減りつつある。Mishの$2 Trillion Reduction In Credit Card Lines Coming Upという記事では、向こう3年の間にクレジットカード貸出額が2兆ドル減少する可能性が語られている。年間ざっと6000億ドル。 GDPが年間13兆ドルなので、ざっと5%の下げ要素。