技術が確立されたと思い込む愚

元GE技術者・菊地洋一さん講演 「命はほんとうに輝いている」の一部をパロってみた。

  いろいろやってきたわけですけれども、実際に働いてみますと、システム開発の技術というのは全然確立していなかった。もう詳しい話は技術的な専門的な話になりますのでいいませんけれど、とにかくハチャメチャなんですね、施工で。施工というかシステムを造っていく開発の段階で。開発のミスが出るということは人間のやっていることですから、よく起こることですけれども、問題なのは設計そのものも十分検討されていない、いいかげんな感じで開発が進められていました。ですか ら開発中にしょっちゅう変更がある、そのことにもびっくりしましたけれども、送られてくるモジュールのインターフェースがあちこちぶつかっていたり、そういうことにもびっくりしました。自分でチェックしてみて余りにもぶつかっているので、びっくりしましたけれども、とにかく確立された技術じゃないということです。

 それはいくら安全だといっても、稼働してみればわかることで、絶対こんなことがあっちゃいかんというような、決済系の中の大事な部分を支えている大きな部品が24時間、365日にわたってダンプ吐き続けていて、それを何とか補修したら、今度は別の部品がまた24時間ダンプ吐き始めて、それをまた補修して。そんなことではどうしようもないということで、その部品を大がかりに交換したりもしております。

  新しいものには新しい技術的な不安があります。今いったように技術万能というわけにはいかないんですよね。どんなものでも故障は出ます。車でもそうです。 ですけれども、システムの場合はいったん事が起きたら、みなさんもみずほ銀行の事なんか新聞、テレビでよく見ておられると思うんすけれども、いったん事が あった時には大変です。SIerや国はそんな事は絶対に起きないということをいいきります。僕はSIerに交渉したりいろいろしましたけれども、とにかく 起きないといいはるわけです。でも実際、SIerは自分のシステムのことを知りません。僕がいろいろ説明をしますと、「へえっ! そんなことあったんですか」 といってびっくりするわけですけれど、調べてみると僕が言った通りになっていると。でも今更運転しているシステムを止めて、モジュールを全部取り替えるなんてこと は出来ない、「見ているから大丈夫です」の一点ばりなんですね。とにかくSIerは現実を知りません。

下請け、孫請け、曾孫くらいが開発しているのが現場ですから、そういうところで起きた事故、 開発中ですからミスですね、開発ミスを包み隠さず上の会社にいうかというと、まずいいません。そういうことを素直にいってくれというとを、SIerはよく 現場の所長会議とかでそういうことをいうんですけれども、決していっていません。いっていたら現場から締め出されてしまいます。そんなことやる業者を使うなという圧力がかかりますので。ですからなかなか理想的な開発はできない。こういう開発の不具合のことをあまり今日いうつもりはありませんので、技術的に関心のある方は後で聞いてくれれば、僕の分かる範囲内で答えます。

システム開発現場のノリで原発が作られているとしたらそれはもう破滅的な結末しか期待できないが、きっと原発の施行過程はきちんと管理されているはずだから、いくらなんでも配管にヒビが入るとか、そもそも配管しようにも径が違っていてはまらなかったよ、なんていうことはないと信じよう。信じるしかないのだ(棒 *1

その他

原文は面白いので一読して欲しい。技術的なあら探しをするのではなく、「便利な生活をするために、どこまで投資するべきか」という観点で、ね。

自分は今回の一件で原発が嫌いになったけど、「今」浜岡(や、他の原発)を一斉に止めることには反対。大災害が起きれば稼働継続は危険な状態を生むかもしれない。でもそれって過去もずっとそうだったわけだし。停止しても冷やし続けない限りは危険であることに代わりはないのだ。今は復興に向けての電力をできるだけ確保するのが再優先されるだろう。

その一方で、原発抜きでの社会とはどんなものになるのかを各自が冷静に考え、受け入れられる現実範囲で答を選択するべきではないか。もしかしたらそれは、今よりも相当生活水準が下がった社会となるかもしれない。

エアコンが贅沢品で、24時間営業のコンビニもなく、街角から自販機が消え、電車もエレベータも電気じかけの乗り物はなにもかも今より数割ゆっくり動く。要は失われた20年どころではなく、昭和のバブル以前に戻るような可能性も受け入れる覚悟で、原発反対していこう、ということね。

自分はそれでも良いと思っている。月々の電気ガス代が$35程度のケチケチ生活派なので。

*1:今回は設計云々というよりは、緊急時非常時の意思決定を誰が行い、それが遅れたらどんな損失が生じ得るのか、という所にあるというのが自分の解釈なのだがこれは別の機会にまとめてみる