Lance ArmstrongがDick Pound WADA会長を糾弾した手紙

WADA会長Dick Pound氏について興味があったので色々調べていたら、ランスアームストロングがIOC会長宛に「WADA会長Dick Poundをアボ〜ンしてくれ!!」という手紙を出しているのを発見。手紙のコピー(PDF)はこちらからダウンロードできる(英語、かつ、手紙をスキャンした代物)。

ざざっと翻訳してみたが、あまりにも長いので翻訳文とは別にまとめ文を投稿する。まずは翻訳文。

2006年6月9日
懲戒処分のお願い

敬愛なるRogge会長とIOC役員会の皆様:

私はこれまで三回オリンピックに出場し、一つの銅メダルを獲得し、そしてツールドフランスで7回総合優勝をした選手です。今回、お願いがあってこの手紙を書いています。オリンピック運動が全ての人間に公正に適用され、オリンピック運動の規定に違反した人間は例外なく処罰されるということを宣言していただきたいのです。その処罰にには、オリンピック運動への一定期間参加禁止を含めていただきたいのです。

過去15年以上に渡り、私は最高の競技者であり続けました。その結果、私はオリンピック運動が競技者に求めるあらゆる規則や要求に従うことになりました。私はオリンピアンに求められる義務を厳格に受け止め、オリンピック精神の理想に従って生きてきました。私は競技中においても、競技外においても、薬物検査の対象であり続けました。聞くところによれば、私はオリンピック運動史上最も検査された競技者ということです。もしこれらのルールを破った場合、たとえそれが意図しない間に摂取した禁止物質であっても、二年ないしは四年の競技参加停止処分が下され、二回目の違反においては永久追放されるということは承知しておりました。

一方で、これらの規則は一定の保険と保護を与えてくれています。規則によれば、国際オリンピック委員会(IOC)、各種の国際連盟機関、各国のオリンピック評議会、各国のスポーツ管轄組織、各競技の管轄団体、検査研究所、そして反ドーピング機関(WADA、USADAなど)およびこれらの団体のために働く組織(ここでは「スポーツ監視組織」と呼びます)なども、規則に従わなければならないということになっています。その規則では、スポーツ監視組織が専門的かつ公正に振る舞うこと、およびオリンピック憲章の理想を遵守することが求められています。これは競技者とスポーツ監視組織の基本的契約になります。私達競技者は、規則に違反した場合、皆さんによる処罰執行を受け入れます。ただし、そこには監視組織の皆さんも規則を遵守する、という前提が必要です。規則に違反した人間に対し、処罰を執行するのは監視組織の責任です。

2005年8月、L'Equipe紙の記事を読んだ際、私は次の二つの事実を知りました。(1) フランス検査研究所は虚偽の研究結果を発表した、もしくは、調査を正しく実施しなかった。なぜなら私は競技能力向上のためにEPOを使ったことは一度もないからです。 (2) 競技者そしてオリンピック運動推進者としての私の人権は蹂躙されました。

後者については、国際的に定められた薬物検査工程をちょっと理解している人なら誰でも理解できるはずです。わずか数週間の間に、私からの要請や働き掛けもないのに、ドーピング疑惑にある1競技者を支援するという前代未聞の体制が敷かれました。夏季オリンピック連盟(ASOIF)とIOC競技者評議会は「自転車競技選手ランスアームストロングに対するドーピング嫌疑を強く非難する」*1という手紙をWADAに対して送付したのです。

Rogge会長は、その後に続いた不当な話をご理解されているはずです。2005年10月初旬、あなたは状況説明のための声明せざるを得なくなってました。その声明では以下の基本的原則が指摘されています。*2

  1. 無罪を証明するのは競技者の責任ではない
  2. 競技者の有罪可能性を証明するのは、当該競技の管轄組織の責任である
  3. 本件は科学的調査が目的であり、ドーピング摘発ではない」
  4. 国際スポーツ組織や反ドーピング組織は、以下の場合においてのみ異議を唱えることができる。(a) 検査結果は競技者の尿検体から正しく導出されたと証明でき、 (b)検体に禁止物質が含まれていたことが実証でき、(c) 検査工程において競技者の権利がきちんと保護されていたことを実証できる。

これらの原則はあまりにも基本的すぎるので、いちいちIOC会長に対して介入を依頼するようなものではないでしょう。しかしながら、これらの原則は私に対する嫌疑調査においては完全に無視されてしまいました。IOCがこれらの基本原則を正しく理解し、私や他の競技者の権利を保護するという姿勢を明確にしていただくことに深く感謝いたします。前述の声明において、会長は私の権利が尊重されなかったことを認め、事実調査を第三者機関に依頼していただけました。

Rogge会長による第三者調査機関への要請から数日後、UCIIOCの要請どおり、オランダのEmile Vrijmanを招聘しました。私の世評は落ち続け、私の運営する慈善団体や先進的癌研究、さらには癌治癒者への支援活動に支障が出てくる中、Vrijman氏による調査が完了するのを辛抱強く待つことを決意しました。正しい調査が実行されるのなら、私への疑惑が晴れることはわかっていたからです。また、この徹底的な調査により、私の検査結果は陰性であり、WADA検査研究所が不適切な体質であったことが暴かれることもわかっていました。

私はVrijmanらによる調査が終了するのを辛抱強く8ヶ月待ち続けました。オリンピック運動に参加する人間に求められるとおり、私は調査に協力いたしました。手元にある関係書類は全て調査機構に送付しましたし、質問に対しては直ちに回答いたしました。

IOCが依頼した外部捜査機関による包括的調査報告書はすでに完成しております。この報告書から読み取れるのは、WADAとフランス検査研究所、具体的には、Dick PoundとJacques De Ceaurrizの二名の共謀による職権濫用です。この報告書は130ページに及び、そのうち100ページ以上は証拠書類ですが、基本的事実は完全に網羅されております。

  1. WADAおよびフランス検査研究所は外部捜査機関に対し一切の協力をしませんでした。一切の書類提出もしなかったことは特筆に値します! 競技者がドーピング検査に協力しなかった場合、その選手は即時資格停止となります。WADAやフランス内閣、そしてオリンピック運動に参加している検査研究所が、自らの不利を証明する可能性のある文書提出を拒むことが許されるのでしょうか?
  2. 検査は正しく実施されていませんでした。(a) 保管体制の不備。どの選手の尿が使われ、誰が検査を指揮し、どの検体にどんな検査が実施されたか、などの情報管理が完全に欠落していた、(b) 外部捜査機関の報告書にあるように、検査研究所での検査は不十分な点だらけで、独自の手順による検査だけが実施されていました。そこでは「A」検査も「B」検査もなければ、組み換えEPOの検出に必要な安定性検査も実施されていませんでした。検査結果をもとに、どの選手を有罪にすることも可能だったわけです。Dick Poundはメディアに対し、「A」検査で陽性確認されれば「B」検査は必要ではなかろう、と話していました。EPO検査での偽陽性件数の結果以前に、フランス検査研究所は一切の追試をしていなかったわけです。「A」検査も「B」検査もなく、ただ不十分で不適切でいい加減な予備検査だけがあったのです。
  3. フランス検査研究所は調査結果が特定の競技者につなげることはできないし、そうするべきではないということを理解していました。しかし、WADAは研究所に対し、検査の不十分な部分を削除し、特定の競技者の検査結果である旨の報告書を作成するように指示しました。この報告書が競技者のドーピング調査書類を閲覧できる人間に渡るということを確信していない限り、Dick PoundとWADAが検査研究所に対し、特定競技者のドーピング調査番号を割り降った上でこの不適切な報告書を完成させるように指示する意味はありません。2005年7月、L'Equipe紙の記者は、UCIから不正手段を使って、私の1999年ツールドフランスにおけるドーピング調査書類を入手しました。それから一ヶ月も経過しないうちに、Dick Poundの指示により、フランス検査研究所は問題の報告書を作成し、L'Equipe記者がその報告書と1999年のドーピング調査書類から、私のドーピングを指摘したわけです。
  4. フランス検査研究所にもWADAにも、全く何の証拠がないにも関わらず、Dick PoundとJacques De Ceaurrizはメディアに対し、私がドーピングをしていたという強固な(あるいは決定的な)証拠があるという情報を流しました。
  5. 私の尿検体は、私やUCIの同意なしに利用され、検査が実行され、報告書が作られました。メディアへの発表を含め、これらは競技者としての私の権利を侵害しています。

検査研究所の不法行為は、Dick Poundの指示および強要によるものと思われます。もちろん、だからといって研究所の行為を許せるわけではありませんが、この事実は研究所の責任者達がWADAに対抗するよりは規則や法律を破る道を選んだという証拠でもあります。Dick Poundによる職権濫用、すなわち、研究所に対し不適切な指示を与え、メディアに対し不適切な声明を発表し、外部からの捜査に対しては協力を拒む。これらの話は、オリンピック運動に関わる者にはそれほど驚くべきことではありません。WADAが結成されて以来、Dick Poundはその職位を悪用して、確たる証拠もないのに、競技者や競技団体を非難し続けてきました。今回の件に関して言えば、Poundはメディアに対し、「あらゆる報告書」をもとに私が有罪であることを発表していましたが、その後発言を翻し、調査の詳細については関知していない、と言っています。

UCIの調査報告書が完成し、検査研究所とDick Poundの不正行為が暴かれたわけですが、Dick Poundは結果を受け入れて謝罪するどころか、外部調査機関に非難の矛先を向け、私のドーピング疑惑についてさらなる声明をメディアに発表しています。これら声明の中で、Poundは調査結果に関する批判もしていませんし、外部調査機関に過ちがあったという証拠も提示していません。すなわち(a) 検査研究所における管理体制の不備、 (b) 不完全な検出テストだけが実行されていた。Dick Poundのいう「B」検査の不実行だけでなく、「A」検査すらなかった。(c) 研究所ではEPO偽陽性が何件も検出されていたが、この偽陽性を検出するための安定度検査は実施されていなかった。(d) 検体はEPO値が突出しており、汚染が懸念されている。また、1999年ツールドフランスでの検体に対しどのような細工がされたかの記録が残っていない。 (e) 検査研究所では、これらの不完全な報告書を作成するべきではないと理解していたが、WADAやフランス内閣の指示により報告書にした。他にも細かい疑惑が数々ありますが、問題はWADA、フランス内閣、そしてフランス検査研究所にあります。なぜなら、彼等は外部調査機関に対して一切の証拠書類提出を拒んでいるからです。

Dick Poundは倫理基準を常習的に破っている人間です。彼が今回とった行動は非難されて当然であり、弁解の余地はありません。PoundはIOC代表としてWADAにおける職位を得ています。PoundはIOCメンバーであり、数々のIOC評議会に関わっています。WADAが国際的な薬物検査組織としての役目を担っているのは、IOCがそうさせているからです。国際的なスポーツ組織は、WADAに捜査権を付託しなければなりません。そうしないと、オリンピック競技から外され、オリンピック運動から阻害されるからです。ASOIFとIOC競技者評議会は、9月に本件に関する懸念を表明し、IOC会長は10月にその懸念を再表明しました。8ヶ月に及ぶ包括的な調査により、フランス内閣やフランス検査研究所そしてWADAの非協力はあったものの、Dick PoundとWADAによる不法行為や倫理規定違反は実証されました。UCIから競技者の権利蹂躙の事実とWADAが告発される可能性を突き付けられたときのDick Poundの反応は、「だからこそ、我々には保険があるんだ」という感じでした。

オリンピック運動が定める規則と規制は無視され、意図的に破られました。競技者の権利は意図的に蹂躙されました。Dick Poundは私のことをつけ回し続けています。なぜなら、私はDick Poundによるこれまでの非倫理的行動を堂々と批判する数少い人間の一人だからです。*3 ASOIFやIOC競技者連盟が検査研究所に対して懸念を表明した時、Dick Poundは反撃し、嘲笑しました。これは検査研究所を守り、引いては自身の悪行を隠すためだったのです。

不法行為は今回に始まったことではありません。これは組織的な問題の一角です。トリノオリンピックにおいて、WADA傘下の薬物検査研究所所長がスポーツ調停裁判所(CAS)の調停担当者と会合する機会がありました。研究所側は、WADA公認の研究所がWADAからの強要により不適切な仕事をしなければならない事実を述べ、CAS側を楽しませたそうです。その直後、所長達はLjunqvist教授との会合に参加しました。IOC委員でWADAの健康・医学・研究評議会担当役員であるLjunqvist教授に対し、所長達は同じように懸念を訴えました。所長達は、WADAに対する批判がWADAに漏れると、報復に遭ってWADA認定の薬物検査業務ができなくなる恐れについて訴えていました。

検査研究所はWADAへの恐怖心で機能しています。かつては反ドーピング分野で指導的な立場にいた研究所所長達は、WADAプロジェクトへの参加を拒むようになっています。もし調査結果がWADAの望む内容でなかったら、その報告をした研究者はWADAから攻撃されてしまうからです。いつも同じパターンなんです。UCIの外部捜査機関は、直近の犠牲者ともいえます。Dick Poundの気にいらない情報は、その情報がランスアームストロングからであろうが、ASOIFからであろうが、IOC競技者連盟からであろうが、IOCであろうが、UCI外部検査機関であろうが、調査結果を書いた研究者であろうが、Pound氏は情報を届けた人を攻撃するのです。

Rogge会長が昨年10月に指摘されたように、現在進行中のこの戦いはオリンピック運動に傷をつけています。規則と法律は侵害されています。私が聞きたいのは、規則は競技者だけに適用されるのか、それとも規則はDick PoundのようなIOC委員にも適用されるのか、ということです。

この点に関して言えば、私はIOC競技者評議会や他の競技者と同様に我慢を重ねてきました。私達は政府に呼びかけて、下記に述べるような組織、例えばWADA、への資金供給を保留することもできます。(a)倫理行動規定がない (b) 利害関係者が組織職員や役員の倫理規定違反を告発できる仕組みがない (c) 競技者や競技者集団を繰り返し攻撃し、なんの証拠もないのにイカサマ師のレッテルを貼る (d) 他人に対しては完全な説明を求める一方、自らの問題に対する調査には一切協力しない (e) 遡及検査で競技者に圧力をかけるが、遡及検査実施の根拠はなく、遡及検査で陽性になった場合には処罰しようとする (f) 実例ではなく、脅迫や不当な圧力で従わせる (g) 利害関係者からの懸念に対応しない (h) 自身の職員が規則、規制、法律、そして競技者の権利を蹂躙することを許している。

今回の件に関し私はIOCが定めた決議を受け入れ、外部捜査機関による報告書が発表されるのを辛抱強く待ちました。IOC会長が要請した通りに外部捜査機関は調査を実行し、報告書がまとめられました。今回の調査では、WADA、フランス内閣、およびフランス調査研究所は本件に係る関連文書の全てを提出するよう要請しており、それを受けてDick Pound、Jacjques De Ceaurriz、WADA、フランス内閣およびフランス調査研究所に対する懲罰動議をするよう結論付けております。

私は、WADA、フランス内閣、フランス調査研究所およびこれらの職員に対して法的に訴えるように指示されています。IOC懲罰動議会議を招集し、これら組織の活動を停止させ、職員達が今回の調査報告にあるような規則、規制、法律違反をした事実に対してきちんと調査対応できるようにするべきです。IOC倫理会議は、オリンピック憲章およびIOC倫理行動規定に定められた倫理規定に対する違反の調査と処罰を決定する役目を負っているはずです。

競技者が厳格な薬物検査規定をうっかり破ってしまった場合、その競技者は最悪2年間のオリンピック運動参加停止処分がとられます。聴聞会が即時開催され、厳罰がただちに執行されるのです。二年間の停止処分は、競技者の全経歴のかなりの部分を奪い去ります。一方で、Dick Poundは長年に渡り不正を働き、オリンピック運動で定められる規則や規制を破り続けてきました。彼は、競技者や競技者グループに対して、全く科学的根拠がないにも関わらず有罪宣告をしてきたわけです。WADAの職業道徳に背くような活動や性質も、Dick Poundに責任があります。今回の調査に対し、Dick Poundが協力を拒否したということは、彼がオリンピック運動を始めとする各種規則に縛られるということを拒否する姿勢を反映している、ということでもあります。

本件が最初に公になったのは2005年8月23日のことであり、戦いの収束が見えないまま1年が経過しようとしています。これ以上の遅れは容認できません。本件の結論が出されないということはオリンピック運動にとっても不利益なことです。私はこれまで多くの被害を受けてきましたが、オリンピック運動全体や薬物検査の信頼性までも傷付けられることは放置できません。薬物規制のための強力なシステムが必要であり、私は競技人生を通してそのための手伝いをしてきました。薬物検査システムに対する信頼の強化が必要であり、信頼が失われるようなことがあってはなりません。私が被った被害に対する救済策を見つけることは可能でしょうが、他の競技者が守られるわけではありません。彼等の多くはWADAによる不正行為に対して戦う資金も人手もないのです。

Dick Poundは他人に対しては常に迅速さを要求してきました。不正があったとされる人間に対してはオリンピック運動への参加から即刻除外されるよう、関係者を動かしてきました。Poundは各国のスポーツ関係者に対し、正直かつ倫理的に行動するよう雄弁に語ってきました。

混乱の中、倫理的基盤を探している世界。そこではビジネス界や政治界の指導者達が金や権力を追い、本来あるべき姿から逸脱している。スポーツは、人生のあるべき姿を表現するモデルを提供できる。基本的な規範は全世界共通であり、簡素なものである。スポーツでは道を踏み外すことは罪である。スポーツでは、指導者、参加者、そして観戦者の全てが、基本に帰ることで利益を享受できる...

オリンピック運動が生き残れるかどうかは、その完全性が鍵である。完全性こそ、若者や社会が受け入れる模範を創造するのだ。完全性が無くなれば、オリンピック運動を支える仕組みは不安定となり崩壊する。オリンピックを指揮する立場にある人間は、常にこの完全性を維持し、その基礎を傷付けるような動きに対しては恐れずに立ち向かうことが必要である。

指導者達は自ら率先して模範となるべきである。指導者層がスポーツを監督する姿勢は、シーザー皇帝の妻がそうであったように、完璧で非の打ち所の一点でもあってはならない。指導者達は規則の内容とその拠り所の精神を、公正かつ完全に実現する責任を負う。指導者達がこのような行動を取らなかった場合、どんなことが起きるのか、我々は何度も目撃してきた。指導者達がスポーツに対する敬意を持たなかったら、競技者や観戦者達もその真似をするだけであろう。

上記はDick Poundの本、Inside the Olympicsからの引用です。Pound氏はIOCの倫理担当と名乗っていますが、彼が問いて回っている事柄を自ら破っています。

IOC役員会とIOC会長は、本件に対して断固とした態度をもって対応することを理解されているはずです。さらなる調査とそれによる時間浪費は何の効果ももたらしませんし、容認できません。本来責任をとるべき立場の人がその責任を果たさず、自らその地位を譲るような行動に出るのなら、その人はオリンピック運動への参加を停止されるか除名されるべきでしょう。

Dick PoundはWADA設立の中心的人物であり、彼がオリンピック運動にどれだけ貢献したかは理解しております。また、Poundがオリンピック運動において多数の友人や政治的派閥を抱えていることも理解しております。その中にはPoundを支援することで利益を得たり、将来の見返りを期待したり、Pound氏によるご褒美を期待している人もいることでしょう。だからといって、オリンピック運動が規定する義務に束縛されない人物をWADA会長の地位に起くことは許されません。

本件に関し、即時の対応をとっていただいたことに感謝いたします。

*1:ASOIF会長Denis OswaldおよびIOC選手評議会会長セルゲイ・ブブカがWADA会長Richard Poundに2005年9月20日に送付した手紙

*2:2005年10月7日、De Morgen紙でのIOC会長Jacques Roggeへのインタビュー

*3:2004年1月、フランスのLe Monde紙はPoundの「大衆はTour de Franceや他のレースに出場している選手たちがドーピングしていることを知っている」という発言を報道しました。Poundの声明は明確です。彼は「Tour de Franceの選手みんなが」ドーピングしている、と語ったのです。一部ではなく、「全部」です。私はPound氏に「確固たる証拠もないのに無実の選手達を落しいれるようなことに時間を使わず、本来のドーピング摘発業務に専念するよう」手紙を書いたのです。Poundは怒りました。なぜなら、彼のそれまでの不法行為咎められることがなかったからです。Poundは全選手の違反行為を主張していたにも関わらず、私が怒るのはおかしいとも言いました。違反選手を名指しししていない、というのが彼の主張です。今回の件は、Pound氏を公の場で批判すれば誰にでも起きる事件なのです。