IT投資額の問題か?
ITProの世界から立ち遅れる日本のIT投資マインド,これでグローバル競争に勝てるのかを読んで思ったこと。
IT投資額の問題ではないでしょ。
記事の中身を要約すると
- 日本の経済成長率は低いよね
- アメリカの経済成長率は高いよね
- 日本のIT投資額は低いよね
- 他国のIT投資額は高いよね
で、結びの文が「果たしてこれで日本企業は,さらに激化するグローバル競争を勝ち抜けるのだろうか」なのね。なんか唐突。
日米IT投資比較分析調査報告書
当該記事が引用している日米IT投資比較分析調査報告書 (エグゼクティブサマリ)の公開(有料頒布)についてを読んでみた。結論の出し方が恣意的なのはこちらも同じ。ちうか、こちらのほうがひどく感じる。とくにここ。
(4)経営課題に対する最重要施策
経営課題に対する最重要施策の調査では、日本はITの活用を第5位にあげているが、米国は、第2位に位置づけている.
「IT以外の設備投資」という回答があるけど、それに対する回答率は日本が11.6%でアメリカはゼロだ。
どういう会社相手に質問したのかは有償版を買わないとわからないのだろうけど、ITであろうがなかろうが、投資に回せる割合には限界がある。[*1] IT以外に投資せざるを得ない状況にあれば、ITへの投資が低くなるのは当然。
あと、上記グラフから透けて見えるのは
なんてところかな。
で、このレポートは唐突に以下のような結論をだしてくる。
(1)株主起点による競争力の違い
株主から高収益を継続的にも求められる米国企業は、特に景気回復期においては、イノベーションを志向し、新製品の開発、新規顧客の開拓を行う.その際に活用されるのがITであり、これがIT投資の差の原因になっていると思われる.(2)CIOの位置づけや組織文化の違い
米国ではITの責任者、つまりCIOを経営陣の1人としておき、その効果についてのアカウンタビリティを持たせようとしている.また、米国企業では、ERPパッケージ導入し、業務をパッケージに合わせる組織文化が日本に比べて強い傾向がある.このような米国でのCIOの専任の配置や権限の委譲、ITの組織文化との親和性の高さが米国のIT投資を押し上げる要因になっていると思われる.(3)ITの位置づけの違い
日米の経営あるいは現場におけるITの位置づけが異なる.米国ではITをツールとして効果的に活用(投資)し、差別化に結びつけようとしている.日本の場合は、ITをコスト減のツールとして位置づける傾向があり、ITを経営戦略遂行のためのツールとして積極的に活用(投資)するまでに至っていないように思われる.
(1)がどうやったら導出されるのか私にはわからない。
(2)も不思議な話で、パッケージに合わせて業務設計できるのならIT投資は減るはずなんだよね。権限委譲については、CIOの有無よりは、組織内牽制の問題ではなかろうか。IT部門はシステムの企画までで、予算権限は総務部、なんていう企業が少なくないのが日本。そんな所にCIO置いても右手と左手で喧嘩するようなもの。
(3)も微妙。お上の規制で差別化すらできない業界も日本には残ってるでしょ。金融とかね。あと、アメリカはITで人材を置き換える事が可能。米国人はクビにして、海の向こうのインド人に電話応対させるとか。日本でそれやると組合がうるさいから、投資効果は低くなる。
このあたりまで掘らずに「IT投資と企業成長」を結びつけるのは無理があるのではないかと。