どーなっちゃうのアメリカ経済

Minyanvilleという経済サイトが面白い。まじめな話を茶化して書いてくれる。そのMinyanville10月31日版「Five Things You Need to Know」によれば、FOMCによるFF金利0.25%下げは「本質的な問題から目をそらすための煙幕」ということなんだな。

FHLB

歴史の授業で習った「大恐慌」。その直後の1932年に「不動産融資を活発化させるため」に、時のフーバー大統領が「Federal Home Loan Banks」なるものを設立したそうな。

  • FHLBは8100の銀行が出資
  • FHLBは債券市場で調達した資金を会員銀行に貸し出す
  • その際の担保となるのは、a) 不動産抵当つき短期略式借用証書(Short Term IOU backed by mortgages)と b) 抵当証券(mortgage bond)。

本質的問題

8月の金融危機で露見したのは、後者の抵当証券市場が機能しなくなった、ということ。つまり、FHLBは会員銀行にお金を貸しにくくなっている。

にも関わらず、FHLBは夏以降に1430億ドル(16兆円)を短期債発行で調達し、会員銀行に貸し出している。結果、FHLBの債務は21%増加して、1.15兆ドル(132兆円)になってしまった。

さらに...FHLBはFannie MaeとFreddie Mac(いずれも連邦住宅抵当公庫の機関)の債務保証(4.7兆ドル)をしている。上記債務とあわせると、FHLBが抱えている債務はなんと連邦政府の借金総額5兆ドルを超えてしまう... ざっと10兆ドル=1500兆円... 思考できる領域を超えてますな。 

ところで...

FHLBの債務が急増しているのは、銀行や不動産融資企業の経営がヤバいから。MinyanvilleFive Things You Need to Knowは、結構鋭いところをついている。

  • If the FHLB is now the lender of last resort for many of these financial institutions, some of them extraordinarily weak, what if in the course of loaning money to weak members, who in turn used that money to shore up weak positions, we begin to see the strong members of the system back out?
  • FHLBが金融機関の最後の拠り所だとして...その金融機関のいくつかは、かなりクビが回らない状態なんだけど... それらのヤバい金融機関が自分の借金穴埋めをするためにFHLBを使うようなことになれば、経営が安定している会員金融機関はFHLBを離脱するようなことにならないかね?
  • If confidence in the FLHB system weakens, prompting investors to get rid of FHLB debt, could this cause the collapse of one of the banks?
  • FHLBが弱体化して、会員金融機関が出資を引き上げるようなことを始めたら、それらの銀行のどれかは潰れてしまうのではないかね?

こうして説明されると、FF金利を0.25%下げるというのは「煙幕でしかない」というのもわかる。