週末の探索

あちこちの経済関係サイト・ブログを読み漁り中。
注:いろいろ書いたので長いよ。

PIMCO Bill Gross氏

毎月初めに更新されるBill Gross氏のブログ。いつもは冗談交じりの軽い調子で始まるのだが、今回は妙に真面目。しかも、太字で強調している部分もあり。いくつか気になったところを引用&適当に翻訳。

Mortgages, auto finance, and credit cards were offered on increasingly liberal terms and continually lower yield and risk spreads because of Wall Street ingenuity and – importantly – the naïve endorsement of their black magic by rating services willing to sell AAAs for a fee.
住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードなどの発行条件がどんどん緩くなり、金利は下がり続け、そしてリスクは拡散しつづけてきたわけだけど、その背景にあったのは金融機関の賢さというよりは、格付け機関に金を払えばAAA(最上位格)がもらえるというカラクリだったのだよ。

Because demand in the form of consumption has been artificially and fictitiously stimulated in recent years by financial engineering run amuck, there is a legitimate question as to whether its black hole imploding destructiveness can be totally countered with another dose of lower yields and deficit spending packages.
ここ数年の消費ブームは金融工学で無理やり刺激された結果であり、これ以上金利を下げたり財政赤字を増やすような景気刺激策を実施したりしたら、ブラックホール的に景気が爆縮するのではないか、という疑問も湧いてくるんだよね。

As Keynes theorized and then Krugman affirmed, when private demand falters, it becomes the responsibility of government to fill the breach. Because it likely will not do so effectively until after a new Administration is elected in late 2008, the U.S. economy and its somewhat coupled global companion will sleep walk for some time and a resumption of prosperity as we knew it will be dependent on reforms of monetary and fiscal policy resembling the 1930s more than our past decade.
ケインズクルーグマンが主張したとおり、民間部門が低迷しているときは政府が需給不足を補填する義務がある。でも、ご存知のとおり今年は選挙なので政府がまともに動けるのは2008年末になるだろう。ということは、米国経済およびそこに依存する世界経済は当面の間打つ手もなく夢遊病のようにふるまうわけだ。経済修復と金融政策がばらばらな状態というのは、過去10年にはなかったことで、むしろ1930年代に近い状態だわな。

その他部分も含めて要約すると:

  • FRBの利下げは遅きに失した
  • そりゃ、利下げをしないに越したことはないけど、もはや利下げや減税などの景気刺激策だけで民間需給を復活させるのは無理
  • むしろ、これ以上の利下げや財政赤字拡大は、急激な経済活動低下を引き起こす可能性もある
  • FHA(Federal Housing Administration:連邦住宅局)の再生を急ぎ、不動産ローンで困っている人達の救済を急ぐべし
  • このままでは1930年代のように(訳注:大恐慌のように)なるよ

ブッシュの景気刺激策は既に死んでいる

Countrywide And Chase Shut Off The Cash Spigot

不動産価格のさらなる低下や金融機関の体力低下が進めば、貸し渋りは一層深刻になる。もう打つ手はないような...

Ambac救済策

債券保証業者(モノライン)二番手のAmbacへの救済策がまとまるらしい。→NYTの記事

  • CitiやUBSなど8行が関わっている模様
    • そいつらはAmbacにか〜なり頼っているのであろう
  • AAA格維持に必要な資本(150億ドル???)を注入することで、多大な損失計上を避けることができる。

でもね...住宅市場が劇的に改善して、支払不履行がなくなって、膨大な在庫が解消されるくらい住宅がバカ売れして、経営難に陥った住宅建築業者が息を吹き返すくらい新築需要が戻らない限り、債券保証業者は金を失い続けるしかないわけでしょ?

そんな状態になるまでは、各銀行は「自分が受け取る保証金を自分で払う」という、よくわからない経理操作を続けるわけ。

結局は、金融機関各社はどこかの時点で(経済が劇的に復活しない限りは)多大な損失計上をするしかないのではなかろうか。

AAA格ってなんなのだろう...

その債券保証業者が死守したがっているAAA格。「AAAなら、損失を計上する必要がない」という会計ルールがあるらしい。でも、AAAだからといって安全なのかというとそうでもない、というお話。

WSJ記事によれば、Normaという名前のCDOがあって、それを購入した投資家が膨大な被害にあったという。

どれくらいの被害かというと、マサチューセッツ州のSpringfield市にNorma CDOを売ったメリルリンチが訴えられるくらい。購入時価格の10%以下にまで価値が低下したらしい。

そして、そのNormaの格付けは(いくつか種類があるけど)、Bill Ackmanが公開したExcel形式のデータによれば、S&PがAAAを与えている。(Kleros Preferred Funding LtdのCDOに含まれるNorma CDOはAAA...CDOCDOなんつー代物にまで保証しているのね...)

「AAAにしておけば損失を計上する必要がないから、とりあえず資本注入でしのいでおけ」というのは時間稼ぎ以外の何物でもないし、その間にもどんどんジングルメルは増えていくだけ。稼いだ時間が切れるときに何が起きるのか...

どこまで時間稼ぎできるのか

Mish's Global Economic Trend Analysisによれば、FRBの貸出予備金は底をついているどころか「マイナス」になっている。約150億ドル。

こんなことは、過去の金融危機の際にもなかった、という指摘もある。

米国金融機関の「どこか(たぶん複数)」は深刻な資金難に陥っており、FRBのTerm Auction Facilityで運転資金を確保しているのは確かであろう。

この構図が続く間に、米国経済がV字回復できるのか??

あ〜あ

人生3度目のバブル崩壊かよ(笑

  • 1990年日本の土地バブル
  • 2000年米国のネットバブル
  • 2008年→まだ名前がついてないね