物価上昇≠インフレ
ガソリンが高くなった、食品が高くなった、インフレだ、大変だ、みたいな論調が多い今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
大学の教養課程で代返多用してかろうじて「C」をもらった程度の経済学知識しか持ち合わせてない自分でも「物価上昇とインフレは同一ではない」という基本は知っている。が、天下の大経済新聞でもこのあたりがごっちゃになっているのよね。
今日のMInyanvilleには、そのあたりを解説してくれた良記事があった。
Minyanville: How The Bubble Bursts
- 「物価が上昇するのがインフレ、物価が下落するのはデフレ」とみんなが勘違いしている。そして皮肉なことにこの勘違いを期待しているのはFRBである。
- なぜなら、インフレのタネを蒔いたのはFRB自身であるから。
- そして、インフレは最終的にはデフレに転換して終わる。
- インフレは貨幣供給の拡大であり、ほとんどの場合は負債の拡張を伴う。
- FRBが大量のお金を作り出し、それを銀行に貸付け、銀行は消費者に貸し付ける。この流れが1993年から2006年まで続いた。2001年から2006年にかけて、負債創造は加速的に増えていった。
- 特にすごいのは2006年で4兆ドルの負債増加。日本円にして400兆円ですぜ。
- が、2007年に流れが変わる。これ以上の負債創造ができなくなったのだ。
- 借金に借金を重ねることで成長してきたシステムが借金するのを止めたら...しぼんでしまう。[*1]
- つまりデフレだ。今はその初期段階。
- そしてデフレは一様に進むわけではない。原油や食料などは、まだ資金がなだれ込む状態が続いている。
- 今後どうなるか? 負債が減ってバランスが取れるところまでデフレは進む、と著者は予言しているね。
人間は都合よい生き物
物価上昇=インフレ、というのであれば株価や不動産価格が思いっきり上昇した時代はまさにインフレそのものだったはず。でも人間は都合よいもので、資産価格の上昇により実質負債が減少する(そして可処分所得が増える)間は決して「インフレけしからん」とは言わない。
資産価格の下落、信用供与の減少、失業等などで可処分所得が減少していると、「インフレけしからん」という声が強くなる。でも、物価上昇は「症状」であり、病因は「資産価格の下落、信用供与の減少、失業等」のデフレにある。
インフレけしからん、という声に対しておそらくはECBが「利上げ」という形で動くことであろう。でも、現実は既にデフレが始まっているのである。ここで利上げしたら、デフレを加速させるだけだろう。 下手したら、株や商品市場は総崩れだ。
まあ、それはそれで野次馬的には楽しみではある。
明日の朝にはECBの動きが決まっているはず。さて、どうなることやら。
*1:しぼむのを防ぐために、必死に負債を作り出していた、という見方もできる