Agileが根付かないもう一つの理由

大規模Agileの失敗率は驚異的に低い?

そもそも、大規模プロジェクトの失敗率って、ものすごく高くて、70%とか80%とかいった数字を見たことがある。基準が同じとはかぎらないので、断定できないが……。

そうなのです。「失敗」の定義は意外と難しい。随分前に訳した「失敗とは何か」では

CHAOSレポートによれば、成功するプロジェクトの割合はたったの34%だそうな。

Standish GroupのCHAOS reportは、長年に渡ってドブに捨てられてきた何十億ドルにもなるIT関係プロジェクトの話を延々と述べている。34%の成功率っていうのは実は改善された数値で、2001年の調査では28%だったんだな。

とのこと。失敗率66%。ただし、この記事でMartin Fowler氏は

納期が遅れたとか予算を超過したとかでプロジェクトが失敗した、というのは変だと思うね。自分なら、それはプロジェクトが失敗したのではなく見積が失敗している、というだろうな。なので、CHAOSレポートにいろいろ書かれているのはソフトウェアプロジェクトの失敗の話ではなく、ソフトウェア開発見積失敗の話なんだな。

とも指摘している。

見積もりに「ゲタ」を履かせて、お客さんがそれに納得してお金を払ってくれれば「失敗」する確率は低くなる。ただしそれはプロジェクト成功とは限らず、見積りがうまくいった、ということだけかもしれない。

Agile開発における失敗とは?

  • プロジェクト失敗率とリスク」における「失敗」とは、Agileプロジェクトが早期に「Fail」した状態を指す。
  • 回転率50で進めるべきプロジェクトが、回転率10のまま二ヶ月経過したら「こりゃなんかおかしい」となる。つまり、プロジェクトは早い段階で見直しが掛かるか、中止に追い込まれる。
  • 実に明快かつ合理的。
  • が、この「明快かつ合理的」な部分を受け入れられない体質の企業ってのは少なくないわけよ。

予算達成重視 vs Agile

  • 「1年間1.2億円」で見積もったプロジェクトがあったとしよう。
  • 下記筋書きのどちらが嬉しい?
    • 開始後一ヶ月で中止に追い込まれ、お客さんからは月割りで1000万円だけしか回収できなかった。ただし、デスマーチにはならなかった。チームは次の仕事に向けて鋭気を維持できた。
    • 1年間開発を続けたが完了せず、要因追加&デスマーチで2ヶ月超過。お客さんからは1.2億円もらったが、超過分の原価で赤字になった。チームの半分以上は病気になった。

ほとんどの受託システム開発業者は、後者を選ぶのではないかな。DDJの記事にあるように、Agileの失敗率は「20%」。2割の確率で予算未達が発生する、と考えるとビビる経営者は多いはず。

予算達成重視主義も、日本におけるAgile普及の足かせになっているのではないかね。