Peter Schiffはかく語りき

  • 現実逃避でPeter Schiffが話しているのを日本語化してみた。
  • 彼に対しては色々批判もあるが、自分は無視できない存在だと思ってる。


聞き手:

今日のお客さんであるEuro Pacific Capital社社長のPeter Schiffによれば「経済危機はまだ序盤に過ぎない」とのことです。
各種経済指標は急激な下げの後、そろそろ底を打つのではないかという見方がありますが...

Schiff:

全くそんなことはないです。この危機はまだ序盤にすぎないのです。
今はアメリカのインチキ経済が内部崩壊している状態です。
つまり、借金して消費しまくったアメリカ人がにっちもさっちもいかなくなった、と。
そして今度はアメリカ政府が出てきて、また借金をして消費しまくろうとしている。
これは単に問題を悪化させるだけです。
そして、どうやらアメリカ国債市場に生まれていたバブルははじけてしまったらしい。
これに続くのは米ドル価値の下落でしょう。
国債バブルがはじけたら、今度は政府そのものの救済が必要になります。
経済危機は、新しい段階に突入することになるでしょう。

聞き手:

まだその段階にはいたってませんよね。
政府はまだ比較的低い金利で長期間の国債を発行することができています。
政府は何もするべきではないとお考えですか?

Schiff:

私達に必要なのはより多くの借金ではなく、より少ない借金です。
政府は国民が困っているときに、もっと消費しろと言う。
過剰消費に頼ってきたからです。
これは非常に苦い薬ですが、アメリカは市場原理の強制に従うべきです。
つまり、より少ない消費にするべきなんです。
車やら住宅やら家電製品やらを、より少ない借金で購入するべきなんです。
アメリカはより貯蓄し、民間部門の資本を蓄えるべきなんです。
公共部門の資本に頼る必要はないのです。

聞き手:

つまり、政府による景気刺激策は不要と?

Schiff:

そのとおり。
景気刺激策は政府による最悪の方策です。
経済を硬直化させ、悪化させることになるでしょう。
景気刺激策がやることは、より巨大な穴をあけることだけです。
アメリカに必要なのは、全く反対のことです。
すなわち生産性向上や貯蓄を推奨することが必要なんです。
政府は、生産性や貯蓄率を落とすようなことしかやらないのです。

聞き手:

なるほど。たしかにアメリカの貯蓄率は上昇しはじめたようです。
これは良いことなんですね。
でも、政府は一方で借りまくって使いまくろうとしている。

Schiff:

そのとおり。政府は貯蓄率が上昇する過程を妨害している。
貯蓄率はまだまだ上昇させなければならない。
当然ですが、貯蓄しようとしている以上、アメリカ人の消費は減るわけです。
すなわち、きわめて深刻な景気後退が伴います。
だけど、これはアメリカ人が払わなければならない代償でもあるのです。
アメリカ人は何年にも渡って無鉄砲な借金と消費を繰り返してきました。
それに対する代償なんです。
政府はこの現実を直視しなければならない。
そして国民に対し、つらい現実が待っていることを説明しなければならない。
政府が今のまま景気刺激政策を取り続ければ、アメリカはインフレ下の恐慌という、誰も経験したことのない最悪の状況に陥るでしょう。

聞き手:

今よりさらにひどくなると?

Schiff:

そうです。
オバマ大統領は「今、手を打たなければ大変なことになる」と言ってますが、そうじゃないんです。
今、手を打たなければ、そりゃつらい現実が待っているでしょう。
でも、景気刺激策を売ったら、どうしようもない災難がやってきます。

聞き手:

ということは、今までとは全く異なる経済基盤にしましょう、ということですか? 
今までは消費者がお金を借りて、それを消費するという構造に頼ってきました。

Schiff:

そこが問題だったのです。
アメリカ経済はまやかしの基盤で成り立ってきました。
そのまやかしの経済基盤は壊れるに任せて、より強固な経済基盤に置き換えましょう、ということです。
その強固な基盤は、より少ない消費、より多くの貯蓄、そして高い生産性、これらに依存することになります。
バーナード・メイドフ氏のインチキ投資事業は破綻しました。
いわゆるポンジ・スキームだったのです。
アメリカ経済も破綻は免れない。
ポンジ経済だからです。
この仕組みはいったん壊さないといけない。
そして新しい、強固なものに置き換えないといけない。

聞き手:

先ほど国債のバブルがはじけ始めて、次の下落過程に入ったようだと言われましたが、どれくらいの時間軸で考えていますか?

Schiff:

すくなくとも2010年になる前には始まるはずです。
政府の借入が困難になると、国債金利が上昇を始めます。
こうなったら、経済危機は新たな段階に入ったといえます。
そうなったら、FRB金利を高めに誘導せざるを得ない。
たとえ経済が弱まっていようが、住宅価格が下落していようが、です。
もしFRBがインフレを無視して金利を据え置いたら、そして世界中の誰も買おうとしない債務を買い取るようなことになれば、アメリカはハイパーインフレに突入するでしょう。
1970年代に体験したような二桁インフレではないです。もしFRB金利を上げなければ、南米の一部の国が体験したようなすさまじいインフレがやってくるでしょう。

聞き手:

ハイパーインフレというと、ワイマールドイツで人々がパンを買うために大量のお札を運んでいたという話を連想しますが、そういうのがやってくると?

Schiff:

政府が正しい対応をしないとそうなるかもしれません。
では正しい対応とは何かというと、積極的な金利高め誘導です。
たとえどんなに失業率が高かろうが、景気の落ち込みが悪化しようが、金利を上げるという、今は拒否している政策をとらざるを得なくなる。
そして、正しい対応をとるということは痛みを伴います。
でも、今の時点で金利を上げるという選択は、一年後、あるいは二年後になってから金利をあげるよりは痛みは少ないはずです。

聞き手:

良薬口に苦し、ですね。
でも、そういう厳しい対応を取ったら、ただの景気後退が恐慌に悪化するだけじゃないですか? 
政府が手を打たずに恐慌が悪化した1930年代のように。

Schiff:

いえいえ。そうじゃないんです。
大恐慌は政府の方針が生み出した結果なんです。
はじめはフーバー大統領でした。
彼はまさにブッシュ大統領みたいな感じでした。
フーバーは市場が正しく機能するのを拒みました。
1920年代のアメリカもバブル経済でした。
そのバブルは、緩い金融規制や低すぎる金利から生み出されたものです。
やがてバブルがはじけたとき、フーバーは市場が自己調整で回復するのを拒みました。
フーバー以前は、市場の自己調整で済んでいたのです。
彼はある意味で改革志向でした。
フーバーは反自由市場主義、反資本主義だったといっていいでしょう。
彼は独自の救済政策や景気刺激策を打ち出しました。
そうすることで、市場原理が働くのを拒んだわけです。
フーバーは大恐慌を生み出すのに手を貸した、といえましょう。
そして、ルーズベルト大統領が後を継ぎます。
ルーズベルトは、当初フーバーのやり方に批判的でした。
が、実際にはフーバーと同じ路線を、より大掛かりに実施したわけです。
ニューディール政策の結果、大恐慌は10年続きました。
アメリカ経済は、フーバー時代ではなくルーズベルトの時代に最悪期を迎えたのです。
今、まさに同じことを繰り返そうとしています。
フーバーはブッシュで、彼は経済を恐慌レベルに落としました。
そして、ルーズベルトに相当するオバマが大統領になって、より巨大な政府介入、ルーズベルトがやったのより大きなことを始めようとしています。
1930年との違いは、今の経済のほうがひどい状況だ、ということです。
1930年当時は金本位制がありましたが、今は中央銀行がインフレを起こすことが可能です。
結果、インフレ下の恐慌がおきる可能性があります。
1930年当時は消費者物価は落ちる一方でした。
このため、失業しても生活を維持することはなんとか可能でした。
今度やってくる恐慌では、物価がどんどん上がる可能性があるんですよ。