プログラム取引と流動性

Zerohedge: Themis Trading: "Principal Program Trading Is A Way To Get The Market Go In Your Direction"経由:

  • Bloombergがこういうインタビューを流していたとは...


  • 聞き手: まずは住宅市場に関する意見を聞かせてください。ケースシラー指標は劇的な改善を見せたという話がある一方で、最もリスクが少ないはずの借手層における延滞が増えているとも聞きます。どうなんでしょう?
  • Joe Saluzzi: 私は最近言われている「景気改善」の議論はまったく買っていません。力強い反転がなければそれは回復とは言えません。悪化する速度が遅くなるのは回復とは言わないんです。
  • Joe: 評論家は、住宅価格下落の勢いが弱まってきた、これは良いことだとか言っていますが、何も良くなってないんです。住宅価格の下落は続いています。Foreclosureは一定期間の猶予政策が実施されたので件数こそ減りましたが、今は再び金利が上昇しつつあります。こんな中で、ぱっと事態が改善するものでしょうか。
  • 聞き手: 特に失業率が高いと問題ですよね。
  • Joe: そのとおり。失業率は住宅問題の大きな鍵です。評論家は「失業率は遅行指数だ」とかなんとか言ってますが、そんなことは関係ありません。
  • Joe: 私はまだ職を失っていない。でも、隣人は失業中としましょう。「自分も職を失うかもしれない。」という心理的影響が生じますよね。この木曜に発表される失業率は9.8%なのか10%なのかわかりませんが、数字そのものよりも数字が与える影響に注意するべきです。
  • 聞き手: 今の所失業率は9.6%と予想されていますね。その失業率は今から数ヶ月後に峠を越えるだろうという意見があります。失業率が減少に転じれば景気は回復すると思いますか?
  • Joe: そりゃそのうち景気は反転するでしょう。でもね、今はまだそんな時じゃない。失業率は10%とか11%とか12%とかいう予測がありますが、政府のこういった予測は意図的に間違えているわけですよ。財政赤字から銀行ストレステストまで、全て意図的に誤った予測を流してきています。失業率が8.5%になると政府が予測した時も、「冗談じゃねーよ」と思いましたよ。

(場面がちょっと飛ぶ)

  • 聞き手: つまり、今騒がれている景気回復とかの話は一切買っていないわけですね。では株式投資に関しては弱気派なのでしょうか?
  • Joe: 私は現実主義です。物事を判断する時に「クズ」は切り捨てます。希望を持っているだけの政治家とか、希望を持っているだけの経営者とか、そういう連中が物事を良く見せようとしている姿勢は切り捨てています。
  • 聞き手: GoogleのEric Schmidt CEOは「企業は雇用を広げ始めた」と言ってますが?
  • Joe: 数字を見せてほしいよね。。四半期の利益を見せてもらおうじゃないですか。第二四半期が良かったという証拠を見せてもらおうじゃないですか。貯蓄率が急上昇し消費者が財布を締める中で、小売セクターがよい数字を出せたと思いますか? 私は信じませんね。

(臨時ニュースでちょっと話が飛ぶ)

  • 聞き手: 現実主義者といわれましたが、この春から40%上昇した株式市場についてはどう思われますか?
  • Joe: 市場の先行きに悲観的なのに、株価は上昇しちゃっている。この事について悩んでいる人は多いでしょう。私も悩んでいます。
  • Joe: 私の仕事はトレーダーです。それも大口の投信やヘッジファンドのために株式を取引する事です。その基本は、雑音にとらわれない事です。

(画面には「雑音」として「経営者や政治家による楽観的な話」「アナリストによる買い推奨」「金融機関による株売り出し」が表示されるが、話は画面と関係ない方向に進む...)

  • Joe: 最近の株式相場の出来高ですが、三大取引所合計で多い日は120億株。この出来高は、架空のものです。本物ではありません。これらの出来高の60-70%は、高周期型取引によって生み出されるものです。コンピュータが取引しているんです。最速のコンピュータが株で勝っているのが最近の実情です。コンマ数秒の世界。50ミリ秒以上時間がかかる人達は、この業界では恐竜並ののろさとなります。
  • Joe: このコンピュータを操る人達は一日中株を買っては売り、取引所から「流動性供給リベート」を受け取って利益を得ているわけです。それらの取引にはファンダメンタル的な裏付けはありません。だから私も困っているわけです。この強気相場は、コンピュータ達が買いまくることで成り立っているのです。
  • 聞き手: じゃ、どうするわけですか? 貴方は顧客に対し「こういう理由で空売りしています」とか説明するわけですか?
  • Joe: いいえ。私の仕事はトレーダーです。売りか買いかを決めるのは顧客です。私は顧客からの注文を執行するだけです。雑音と闘いながら、ね。
  • 聞き手: ということは、顧客は相場に乗って追いかけるだけ?
  • Joe: それは人それぞれですね。ある客は買いだし、ある客は売りだし。
  • Joe: 私は、取引時間中にプログラム取引が動くタイミングに気をつけています。週あたり何十億株という単位で特定の証券会社を通して取引が行われるわけですよ。一斉に動き出すプログラム取引が生む相場の流れに、顧客の注文がうまく乗っかるようにする必要があります。
  • Joe: こういうプログラムは、他のプログラム取引と同じようなアルゴリズムになります。実際、他の連中を追いかけるようなプログラムを使っている所もあると聞きます。結果として、株価レベルは不自然な所まで上昇します。
  • 聞き手: つまり、今見ている相場上昇は操作されたもので本物ではない、と?
  • Joe: そうです。そして相場が上がるからという理由で、そこに飛びついてきた人がまた相場を上げる。でも、ここに落とし穴があるのです。明日唐突に扉が閉められ、プログラムが一斉に売りに走るかもしれないわけですよ。株価水準を気にする必要はないからです。

(また中断)

  • 聞き手: この相場が操縦されたもので、本物ではないとして...どんな対策がありますかね?
  • Joe: ないでしょうね。SECが規制するとも思えない。
  • Joe: 私はプロのトレーダーです。どういう風に立ち向かえば良いかわかってます。問題は、裏事情を理解していない投資家や取引アルゴリズムの存在です。
  • Joe: 高周期取引をしている連中は、出来高を提供してくれますが、流動性は供給してくれません。出来高流動性の間には大きな違いがあります。出来高が120億株あっても関係ないんです。何か新たな事象が発生しても、流動性がなければ終わりです。買手がいなくなって、終了、です。

(やや略)

  • 聞き手: プログラム取引をしている連中の存在を知っている貴方としては、特に何も気にする必要はないのでは?
  • Joe: ある日唐突に扉が閉められる予感がするんですよ。誰もが出口をめがけて殺到する。相場が大きく動き、みんな「何がおきたんだ?」と不思議がる。で、「そういえばBloomberg TVで変な奴が『高周期取引』の話をしていたよな」とか思い出す。
  • Joe: 今の株式市場には、誰も話したがらない構造的な問題が存在します。誰も確たる証拠は掴んでいないけど、相場介入や相場操縦がまかり通っています。そして、真の流動性は暫く前に消え去っているわけです。で、みんながびっくりしている間に相場は40%上昇。でも、みんなは流動性が回復していない事に気づいていない。