こういう状態で貸し倒れ引当金をいくら積む?
先日HAMP...政府主導住宅ローン借換えプログラムは機能していない、で参照した日銀: 住宅ローン証券化における時価評価方法についてという読み物が面白い。
住宅ローンは返済期間が長いので、その債権時価評価には恣意的な要素が入り込みやすいのだという。会計の教科書にあるような「売掛金の貸倒引当率設定」みたいな単純な話ではないらしい。
ここで
- tは、時点
- Tは住宅ローン債権の最終満期
- Ctは、t期における住宅ローン債権からのキャッシュ・フロー予想値
- rは、割引率
で、
住宅ローンの場合には、通常の企業向け貸出債権等よりも満期が非常に長いため、毎期のキャッシュ・フローをどのように見積もるか、また、割引率をどの程度に設定するかによって割引現在価値が大きく変化する。したがって、恣意性を排除した合理的な価額算定を行うにあたっては、(5式)の分子である将来キャッシュ・フローをどのように見積もるか、また分母である割引率をどのように設定するか、が重要なポイントとなる。
と書かれているのだけど、割引率を決定するには「金利」「住宅価格」「不確定要素(リスク)」を考慮しなければいけない。キャッシュフロー予想値も含め、これらの数値決定から恣意的要素を排除するには市場が安定している必要がある。
- 金利安定、景気も雇用も住宅価格も安定。こんな時に住宅ローン支払いを止める人はあまりいないはず。従ってキャッシュフロー予想に恣意的要素が入り込む余地は少ない。
- 金不先行き不透明、景気は悪い、雇用は回復しない、住宅価格は底打ちしたかもしれないが、まだ一段下げるかもしれない。しかも家の時価はローン残高を下回っている。こんな時のキャッシュフロー予想は、楽観派と悲観派とで大きく乖離するはずである。
借手行動パターン
その「将来のキャッシュフロー」を予想するのに重要な借手の行動パターンについて、CRが記事を書いている。Principal Reduction and Walking Away
- Underwater(住宅価格下落でローン残高が家の時価を越えてしまった人達)でも、「ほとんどは」ローン返済を続けている。
- もし、「返済に苦しんでいる人達(Underwaterであり、かつ、返済が滞っている状態)の元本を減免しますよ」などという方針が発表されたら、真面目に返済している人達も一斉に延滞を選択する可能性がある。これは貸倒れ引当金の大幅増加(=銀行の収益圧迫)につながる。
- よって、徳政令的な「元本一斉減免」政策はないだろう。
という記事。ならば、借手救済は時間と人手をかけた個別対応しか選択肢はない。そして時間がかかるということは、ますます返済不能に陥る人が増えるという悪循環。
JPMorgan決算
NPRの記事によれば、先日決算を発表したJPMorganは
- 2009 4Qの引当金は72億8000万ドル。
- これは2008 4Qと同じ水準。
- だが、2009 3Qよりは10%減らしている。
監査のお墨付きが通っているから問題はないのかもしれない。でも、驚異的な復活などと手放しで喜んでいる状況とも思えんのよね...