カリフォルニア州有権者は電力会社を信用していない

この火曜日、カリフォルニア州にて選挙があった。米国自治体では、法案の種類によっては選挙の際に有権者の賛否をあおぐことになる。部分的な直接民主制なのだ。

その選挙で投票前からかなり論議を呼んでいた法案があった。Prop-16である。

BalottopediaのCalifornia Proposition 16 (June 2010)によればこの法案は「カリフォルニア州における新規電力会社の参入は、有権者2/3の賛同がなければ認められないようにする」というもの。

表向きには、「州の予算や州債を、有権者の賛同なく使うのはけしからん」ということになっているが、実態は現在カリフォルニア州で電力事業を寡占しているPG&Eが新規参入事業者を排除しようとする内容だ。先程のBallotopediaには、PG&Eがこの法案成立に向けて4110万ドル(37億円くらい)を寄付したことが記載されている。

が、火曜日の投票でProp-16には「No」という有権者の判断が下った。

SFGate: PG&E's Prop. 16 lost big in its service area

  • Prop-16は否決。それも「大差」「全選挙区」で。
  • 州全体での反対は52.5%。
  • 反対が最も多かったのは、PG&E地元ともいえるサンフランシスコ。67.8%。
  • この記事が注目しているのは、ほぼ常にサンフランシスコと対立する保守的な内陸部も、やはりProp-16を否決したこと。FresnoやKern郡だ。

これら内陸部がProp-16に反対した理由を、この記事では以下のように分析している。

  • PG&Eが導入を進めているスマートメーターは、導入後に電気代が跳ね上がるという例が多数報告されている。
  • FresnoやKern郡は、とりわけこの「被害」が多かった。
  • スマートメーター導入により、PG&Eは有権者の信頼を失った。

所感

そもそも一企業がこんな自社に都合の良い法案を作るように議会に働きかけることができる、という時点で「ちょっとひどいんじゃないの?」という感想をもった。さらに、下に紹介した動画にあるように「賛成・反対は有権者が決めるべきこと。有権者の投票なしに、電力会社が増えていいの?」みたいな誘導的な広報を流されたら、馬鹿なじゃなかった純粋なカリフォルニア州住民は「Yes」に投票しちゃうのではないかとハラハラしたが、割とあっさりと否決されたようで一安心。

実は自分の住んでるアパートもスマートメーターになっていた。電気代はざっと10%増加。使ってる電気製品は変更ないのに、である。うちはもともと電気代を極度にケチっているので大したことはないが、それでも毎月$35程度で収まっていた電気代が$40に迫った時には怒りが止まらなかった。

おそらくスマートメーターが正確で、従来の検針がいい加減だったのだろう。だとしても金の恨みを侮ってはいけない。「環境主義者」の巣窟ともいえるサンフランシスコが、最もProp16に反対した、という事実が全てを物語っている。

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