システム屋がマイナス金利を唱える学者を批判してみる

Diamond Onlineの緩やかなデフレは常態化 貨幣にマイナス金利をつけられれば無理のない金融政策ができる ―早稲田大学大学院教授 岩村 充―という記事がなんかひっかかったので、例によってシステム屋(制度設計屋)の視点で批判してみる。間違い等指摘はTwitter@masayangまで。

物価が下がると貨幣の価値は上がるので、たとえ名目金利がゼロでも、みな貨幣も持ちたがります。物価の下落にあわせて貨幣にマイナス金利をつけることができれば、無理のない金融政策が行えると、提唱していますね。

例えば、自然利子率がマイナス2%で、人々が予想する物価上昇率がマイナス2%だとしても、貨幣にマイナス4%の金利をつけることができれば、将来の貨幣の価値が同じように下がるので、物価に対してはニュートラルということになります。

仮にお金にマイナス金利をつけることができたとしよう。その場合、企業のバランスシートのうち現金・預金の部にもマイナス金利がかかってくることになる。つまり、その企業は従来からある負債に加え、保有現金・預金分の「利子」も負担しなければならない。結果、実効金利が上昇したのと同じことになる。

で、この実効金利が上昇したのと同じこと、というのはまさにデフレの効果そのものなわけで、それはさらなる投資や雇用の抑制、給与水準の低下→物価下落→貨幣のマイナス金利上昇*1→企業の実質金利負担増加→以下繰り返し

マイナス金利でデフレは解消するどころか、加速するのではないかな?

ではお金はどこにいくのか?

それは国債でしょ。貨幣にマイナス4%なんて金利がつくのなら、国債はマイナス2%で発行しても買い手が殺到するはずだ。つまり国は借りながら累積赤字を減らしていける。すばらしい!

でもそのカラクリは、マイナス金利という仕組みで国民の資産を強制接収するだけなんだよね。なのでマイナス金利なんて手のこんだ仕掛けを作る必要はない。預金凍結&接収すれば1日で済む。

ということで、マイナス金利を主張する人はたとえ大学の教授であろうとも疑ってかかることにした。

*1:マイナス金利の場合は上昇? 下落?