国籍選択と老後の日本帰国

ちょっと古い話になるが、先月10日に北カリフォルニア日本商工会議所主催の「国籍選択と老後の日本帰国」説明会に参加してきた。お話してくれたのはサンフランシスコ領事館の人。名前失念。ごめんなさい。

自分は永住権保持者だけど、米国市民権は持っていない。ただ、

  • 永住権保持者は、相続税率が米国市民よりべらぼうに高い。市民権持ってると、夫婦間の相続税はゼロ。
  • 米国市民権を取得すると、日本の両親を家族として呼び寄せできる=介護しやすい。

という利点があるので、米国市民権取得を考えている。

一方で、日本は二重国籍を認めないから、「やっぱり日本に戻りたい」と考えが変わったときにどうしたらいいのかな、という不安もあった。なので、この「国籍選択と老後の日本帰国」説明会は非常にありがたいものであった。

要旨

自分は日本で生まれたので1984年の改正国籍法で規定される国籍選択制度の対象ではない。すなわち、米国市民権をとると日本の国籍を失うことになっている。

ただし...米国市民権を取得した事実を日本政府が知る手段はない。米国市民権取得後二か月以内に「国籍喪失届」を出す必要があるが、出さなくても罰則はないし、犯罪にもならない法務大臣は「催告」という手段で重国籍者の国籍選択を促すことができるらしいが、この催告とやらは過去一度も発動されたことがない。

一方で...パスポートには気をつけてね、という指摘を受ける。日本国籍を失った瞬間、日本のパスポートも無効になるので、そのパスポートを行使することは旅券法違反となる。最高300万円の罰金。*1

つまり、日本に帰る場合には米国パスポートを使う必要が出てくる。となると、親の介護などで長期滞在する事態が心配となるが...自分は日本人の子として出生した事実は残っているので「日本人の配偶者等」という在留資格で最高3年の長期ビザが取得可能。その場合、日本に滞在しながら無期限に延長も可能。ただし選挙権はない。就職や子供の入学も可能。

そしてやっぱり日本人に戻りたい、という気分になったら... 国籍法第8条規定により、「日本の国籍を失った者で日本に住所を有する者」は「素行条件」「重国籍防止条件」「憲法尊守条件」さえ満たせば、日本に帰化できる。(他の外国人は日本に気化するまで5年以上日本に居住する必要がある)

つまり、米国市民権を取得しても特に損することはなさそうだ、と。

どうでも良いこと

国籍にしても戸籍にしても、日本に昔から伝わってきた「家」が制度の中心に据えられているのだが、その「家」が崩壊してしまったので、色々な制度に歪がでている、という話は「なるほど〜」と思えた。

日本が海外に進出し、海外企業が日本やアジアで商売する... 外国人が仕事を求めて日本にやってくる or 日本人が活躍の場を求めて外国に出て行く。法律を制定した頃、ここまで世の中が変わるということを考慮していたのだろうか?

*1:選挙権もなくなるので、在外投票もできなくなる。