共和党に翻弄されるオバマ政権

既に報道されているとおり、予算をめぐるオバマ/民主党共和党の交渉は暫定的に合意。来週から米国政府機関が休業する事態は回避された。だがこれは試合前のキャッチボール程度に過ぎず、事態は徐々に深刻化していくのではなかろうか。

NYT 4月10日: Next on the Agenda for Washington: Fight Over Debt

  • 米国は連邦政府の借入総額上限を法律で定めている。現在は14兆2500億ドル。「現在は」ということは、過去はこれよりもっと低かったし、議会で合意されれば天井を上げることもできる、ということ。
  • だが、現在は大統領が民主党で、下院は共和党優勢。上院は民主が過半数取っているが、借入総額を改定するには圧倒多数の60賛成が必要で、民主単独では無理。

なぜ14兆2500億ドルが大事か?

  • 今のままだと5月16日までに借金総額が14兆2500億ドルに到達しそうだから。
  • 連邦政府内での貸し借りで当面凌ぐことができるが、それも7月8日まで。
  • なので、それまでの間に14兆2500億ドルの上限を持ち上げる必要がある。

上限改訂できないとどうなるか?

Once the limit is reached, the Treasury Department would not be able to borrow as it does routinely to finance federal operations and roll over existing debt; ultimately it would be unable to pay off maturing debt, putting the United States government — the global standard-setter for creditworthiness — into default.

→借換もできなくなるので米国債デフォルト、とこの記事には書かれている。本当のところはどうなのよ。

なぜ共和党は上限改定に反対しているのか?

  • 基本的に、大統領の反対陣営は大統領案になんでも反対するから。
  • ちなみにブッシュ政権時代の2006年、オバマ現大統領は上限改定決議で反対に回っているし、大統領選挙前は連邦赤字削減を訴えていた。
  • が、オバマ政権下では新たに1.4兆ドルの借金が追加されている。
  • このままでいいんですかね、と共和党の一部が展開した「Tea Party」の動きが中間選挙での共和党躍進につながったのも事実。*1
  • 共和党は上限改定にただ反対しているのではなく、上限改定に同意する引換として、民主党の票田となっている分野での予算を削ろうとしているわけで。
  • つまりは政治的駆け引き。

次に何が起きるか?

  • とりあえず来週からの政府機関閉鎖は回避されたが、これは今日明日をどうするかという話ではない。
  • 共和党は向こう10年で6兆ドルの削減を実現する予算案を既に持っている。主な削減対象は医療。(Medicare & Medicaid)
  • だがそこは共和党。同時に4兆ドルの減税を盛り込んでいるので事態はほとんど改善しない(ため息
  • そもそも目先の上限改定でこれだけモメるのに、長期的な赤字削減について議論することなどできるのだろうか。
  • まずは目先の切りやすいところから切るということになるのではないか。

Given the short time frame for action and the prospect of an intractable political clash, leaders in both government and business are already moving to avert a crisis that most likely would be “a recovery-ending event,” as Ben S. Bernanke, the Federal Reserve chairman, testified recently in the Senate. He described a sequence of events that “would cascade through the financial markets,” provoking another credit crisis like that in 2008 and causing interest rates to jump.

  • それは景気回復策の終わりではなかろうか、というのがこの記事の指摘。
  • もしいま景気回復策を撃ちきれば、2008年同様の金利上昇や信用危機が訪れるだろう、とBenanke議長は議会で証言している。

さてさて、どうなるのやら。

*1:Tea Partyに参加していた低能白人低所得者層がどれくらいその意味を理解していたか、というのは別問題