WADA会長Dick Poundとはこんな奴だ!

ずいぶん前の話だけど、2004年8月12日のワシントンポスト紙にWADA会長Dick Pound氏を批判する記事が出ていた。ちょうどアテネオリンピックの頃。

現実逃避を兼ねて、勝手に無断邦訳。一部本質的でない部分は省略しています。

ペテン師な人間絞首台のDick Poundは、直ちに公務から退き、他人の名声をだいなしにすることで自分の名声を高めるということを止めるべきだ。(ちょい略)

Pound氏の横柄さと偏屈さを知らない人のために説明しておく。彼はWADA(World Anti-Doping Agency)の会長だ。つまりはオリンピックでの倫理面の競争を管理監督するべき立場の人だ。にもかかわらず、Pound氏は何か発言する度に自ら倫理を破っている。彼こそ最大のスキャンダルなのだ。

捜査中あるいは、BALCO*1のように内偵中の事件に関し、WADA会長が意見を公表するというのは反倫理的だし、公平とはいえない。ましてや、事件に関わる人の有罪・無罪に関する判断などもっての他だ。だが、Pound氏はオリンピック開会式の前日に米国陸上チームのMarion Jones選手のドーピングを名指しで批判している。

Jones選手はこの数ヶ月、Pound氏のお気に入りサンドバッグになっていた。彼女がドーピングをしていたという証拠は説得力にとぼしく、公式には彼女は告発されていなかったのに、である。(ちょい略)

Pound氏は「Jones選手は、有罪が実証されなくても有罪」という立場をとりたがる。なぜなら、Jones選手にはドーピング歴のある夫やボーイフレンドがいるからである。でも、こういう考え方がPound氏から出てくるのも面白い。なぜならPound氏こそ、この世で最も汚く腐りきった組織と半生を過しているからである。その組織はIOC: 国際オリンピック連盟。

Dick Pound氏についてあらためて説明しよう。彼は1960年のカナダ水泳代表選手で、それ以降は出世街道まっしぐらの人である。Pound氏は長いことIOCの「独裁」会長だったサマランチの右腕として働いてきた。Pound氏の働きで、オリンピックの放映権はNBCに流れ続け、彼はサマランチ会長の後継とされていた。だが彼は倫理担当だったためIOCの中での注目度は落ちていき、Jacques Rogge氏がサマランチ会長の後を継いだ。つまるところ、彼は出世競争から脱落したのだ。(そしておそらく恨みを抱いている)

それ以来、Pound氏はオリンピック界で注目されるべく努力している。その手段とは、競技をより純粋にするための救世主となることである。つまりドーピングや不正をしている選手は、確たる証拠があろうがなかろうが処罰していく、ということである。Pound氏による米国陸上連盟への攻撃は、根拠もなんもない典型的なイチャモンで、世間の注目を集めたいがために発表されているようなものである。米国陸上連盟にも問題があったことは間違いなかろう。だが、米国陸上連盟はドーピング検査や反ドーピング策を施す力がなかったのも事実である。それらはUSADA(U.S. Anti-Doping Agency)の仕事であり、USADAを監督する立場のWADA会長なら知っていて当然であろう。「Pound氏はいろいろな発言をされることで有名ですよね」と、米国陸上連盟のJill Greerスポークスマンは語る。「仮にもWADA会長という立場なんですから、選手に対する一方的な判断は控えてほしいですね。」 だが、Pound氏のやることはいつもこれである。「一方的な判断」。

Pound氏は法的に問題のあるやり方で弱者を叩くことで有名になってしまった。資格停止をくらったオーストラリアの自転車選手Mark Frenchの家族は、「サダムフセインですら、もっとまともな扱いを受けたはずだ」と嘆く。Pound氏によれば、「WADAや俺のやり方に従わない選手やチームは有罪」ということだ。

(ちょい略)

何故Pound氏は米国陸上連盟をここまで叩いているのか? 米国陸上連盟にはドーピングテストをする権利がないのに? なぜ彼はこんなに叫ぶのか?

1988年のオリンピックで、カナダの陸上選手ベンジョンソンがステロイド利用により金メダルを剥奪された時、Pound氏はIOC副会長であり、かつ、カナダ側調査団の代表を努めていた。Pound氏はベンジョンソン選手の公的弁護者であり、ジョンソン選手は違反薬物を自分の意思に反して使用させられたため基本的に無罪だと主張した。「ベンジョンソンがドーピングの事実を知らなかったことは確かだ」とPound氏は語っている。「ベンジョンソンがドーピングするような考えを持っているとは思えない。」「ベンジョンソンの肉体は有罪だが、法定での有罪が確定するまでは無罪である。」 だが、ベンジョンソンは1981年からステロイドを使用し続けてきたことを後に認めている。

神であるPound氏は、アメリカの陸上選手が「有罪が確定するまでは無罪」と主張することを禁じてしまった。ドーピングが発覚する都度、アメリカ陸上も反ドーピングのために動いてきた。Don Catlin氏の献身的な活動により、オリンピック連盟は数々のドーピング薬物検査において飛躍的な発展を実現した。Dick Pound氏はベンジョンソンをかばう以外に何をしてきたか? WADA会長として彼が実行したことは唯一つ。WADAの本部を彼の地盤であるカナダのモントリオールに引っ越したことだけだ。これはPound氏と彼のビジネス仲間にとってとてもありがたいことである。でもこれって許されることかね? 微妙。

Pound氏は本も出している。「Inside the Olympics」という題名だけど、「セコい奴が考えるオリンピック」にしたほうがよかったかもね。カナダにおける書評では、(略)

私がPound氏を嫌うのは、彼が偽善者の皮をかぶりながら、もっとも叩きやすい相手を叩きのめし、それを踏み台にして出世しようとするからである。

Pound氏は即刻WADA会長を辞め、WADAの信頼性を回復するべきである。彼にはオリンピック精神や正義のカケラもない。古代ローマは、法の完全厳格な適用を進め、結果的に無法状態となってしまった。マーチンルーサーキングの言葉を借りれば、「不法のあるところ、不法だらけ」である。

オリンピック競技は全ての選手に公正で、平等に開催されるべきである。ただし、Dick Poundの言うことには耳を傾けてはならない。彼は公正でも平等でもないインチキ野郎である。

ちうことで、やっぱりLandis事件はクサいぞ! と思うのであった。

そもそも競技に公正さを求める団体のトップが自らのルールを破っているようでは、トップに座る資格はないわな...(つづく)

*1:MLBボンズ選手などを巻き込んだ新型ドーピング薬品に関わる事件。Wikipedia(英語)