Health Savings Account

さっきトイレの中で拾った[*1]Wall Street Journalで、米国銀行がHSA(Health Savings Account: 健康預金口座)の拡大に走っていることを知った。

ご存知のとおり、アメリカには国民保険の類はない。つまり、民間企業が経営する保険しか存在しない。民間だから、いろんな種類がある。当たり前だけど、カバーの良い保険は高い。安い保険はカバーがよろしくない。カバーの良くない保険なら入らないほうがマシ...と思う人もいる。実際、低所得者層は日々の生活費と保険掛け金を天秤にかけて、生活費を選ぶ羽目になっている。つまり、無保険だ。無保険の人でも救急事態では治療せざるを得ない。その負担は結局税金という形で納税者全体に降ってくる。

また、無保険の人は、自分の健康について無頓着になる傾向が強い。つまり、病気になりやすい。結局こういう人たちが国家全体での生産性を下げる一方で、医療費を増やしていることになる。
HSAの仕組みは、大雑把に言えばこんな感じだ。

  • 利息や課税面で有利な健康預金口座(HSA)を開設し、そこにお金を貯めていく。
  • 同時に、通院時の自己負担金額が高い(でも、掛け金は一般的に安い)健康保険への加入をする。
  • もし病気や怪我で医者にかかる場合、自己負担額はHSAから捻出する。
    • 例えば医療総額が$10000、自己負担額が$500なら、HSAから下ろす$500が本人負担。$9500は保険から。

自己負担額が$10みたいな保険に比べると、自己負担額$500という保険は掛け金が圧倒的に安い。これにより、低所得者層でも保険に加入しやすくなる。

でも、自己負担$500というのは決して安いものではない。その事態に備えて強制的にお金を貯めさせるわけ。銀行からすると、預金額が増えるというメリットがある。

一方で、自己負担が高い保険というのは、「気軽に医者に通いにくい」のも事実である。つまり、加入者は自ずと健康に気づかうようになる。結果、国全体での医療費は節約できることになる。また、過剰支出・過小貯蓄が慢性化している米国家計体質の改善にも役立つはず。

HSAは2004年に、それまでのMedical Savings Accountを廃止した上で始まった制度。いろいろ叩かれているブッシュ政権だけど、このHSAだけは褒めてあげても良い政策ではなかろうか。 貯蓄率低下と医療費増大に悩む日本も学ぶ所があるかも。

*1:拾うなよ