日米の差

今日はシリコンバレーのベンチャ企業二社(FunambolOpSource)に、日本から来たお客様と共に訪問。そこで感じた日米システム開発文化の差をちょっとまとめておく。

アウトソーシング

米国の企業は実はそれほどシステム開発や運用をアウトソーシングしていない。日本はそれなりの規模の企業・団体になるとかなりの率でシステムをアウトソーシングしちゃう。

  • 米国: インハウスかアウトソースかを費用対効果で検討して決める。なので、基幹システムは自社で面倒見て、会計システムや人事システムはアウトソース、みたいな判断も当然でてくる。[*1] CIOとシステム部門が企業内でそれなりの力を持っていて、システムの費用対効果を高めるため[*2]なら、現場の業務はもちろん、経営方針にも口を出しちゃう。
  • 日本: おそらく日本企業の多くも昔はそうだったのだろうけど、アウトソースのほうが楽だからどんどんアウトソーシングしちゃって、やがて思考能力を失なってしまい、もはやアウトソーシングなしではやっていけなくなった... で、CIOは経営陣とアウトソース経営層、システム部門は自社現場部門とアウトソース開発者とのブリッジ役になってしまった... 思考能力がないので、費用対効果を計算できない。よって、ただひたすら「アウトソース費用が高い〜 アウトソース費用が高い〜」と言い続けるしかない... というのは言い過ぎかな?

カスタムアプリケーション

  • 日本: アウトソース先に、ひょいひょいとカスタムアプリケーション開発を注文しちゃう。高い!と愚痴りながら、だ。しかも、そのカスタムアプリケーションを専用のサーバ(あるいはVM区画)で動かしちゃう。高い!と愚痴りながら、だ。
  • 米国: まずパッケージアプリケーションを前提にする。それで済むのならパッケージに合うように現場業務を調整する。調整しようのない部分があったら、パッケージのカストマイズを考える。それでもダメで、初めてカスタムアプリケーションを検討する。(が、費用対効果がよくなければパッケージで我慢する)

ASP/SaaS

  • そのパッケージですら、導入費用と維持・運用費用が高いので、ASPが注目され、さらにはSaaSにいくか、と言われているのが米国。ASPはその企業用専用VM区画でアプリケーションが動く。SaaSは、同一VM区画で複数企業用アプリケーションが動く。ここでいうアプリケーションは基本的にパッケージ思想。SalesForce、WebEx、eTologyなんかが典型。つまりユーザ企業はアプリの提供する「型」に合わせて仕事をする。もちろん、カストマイズは可能だけど、基本はあくまでもパッケージ。
  • 日本の現状は「究極のASP」とも言える。カスタムアプリ+専用区画+運用維持。費用対効果の意識が希薄(というか、計算すらできない状態)なので、SaaSへの移行はできない。移行にあたって発生するシステムと業務の退化を現場へ説明することも説得することもできない。

この先どうなるのか?

米国はSaaS一色になり、日本はカスタムアプリベースの究極ASP一色になるのか、というとそうでもなくて、どこかでバランスが取れるのではないかな、と今は考えている。

  • 米国ではSaaSが伸びるだろうけど、どこかに上限が控えている。利用量ベース課金なので導入時は安いが、システムが成長してくると高くつくのは明白。ならばインハウスで引き取るほうが費用対効果で有利になる点がどこかで出てくる。SaaS企業は常にインハウスとの競争にさらされている。
  • 日本では、今かかえているカスタムアプリケーションが足枷になって、企業経営が硬直化してくる事例がでてくるはず。元々古い体質の企業が、さらに自己改革すらできなくなった状態というのは末期的だ。そういう企業から元気良い人達がスピンアウトして、もっと身軽な経営を掲げた会社を興す... そういう新興企業は、システム導入をSaaSベースでささっと済ませちゃう... ならばSaaS提供側に大枚張っておくほうがいいかなぁ...


な〜んていうことを考えながら打ち合わせに参加した一日であった。

*1:さらにいえば、会計部門や人事部門を丸ごとアウトソースするなんてことも珍しくはない...

*2:単に安くするため、ではないことに注意