クルーグマンはかく語りき...サブプライム問題は資金注入では解決しない

NYTimesにPaul KrugmanがAfter the Money’s Gone という記事を書いている。クルーグマンネタなので、ほどなく山形さんが全文を翻訳してくれるはず。

ここでは、記事中にある「銀行への資金注入の例」だけとりあげたい。

  • C銀行は、頭取の弟が経営する企業への不正貸付が焦げ付き、巨大な損失が発生したという噂が流れた
  • こういう噂が流れれば、その噂が真実であろうがなかろうが預金解約が殺到する
  • C銀行は、その預金解約に対応するために手持ち現金はもちろん、担保物件も「叩き売り」して対応しなければならないかもしれない
  • 結果として、その噂が真実ではなかったとしてもC銀行は大きな痛手を被る

そこで中央銀行の登場ですよ

  • でも、中央銀行(米国ならFRB、日本なら日銀)が当座の資金を貸し付けてくれれば、C銀行は担保物権の叩き売りをする必要がなくなる
  • 噂がウソであることが理解されれば、一旦解約された預金も戻ってくるだろう
  • その時点で、中央銀行に(それなりの)利子をつけて返済すればC銀行の痛手は最小限で済む

ただし、噂が真実だったら

  • ただし噂が真実で、C銀行が本当に巨額の損失を抱えていたら、中央銀行の資金注入は何の意味もない

今回のサブプライム危機が過去の金融危機と異なるのは、欧米の各銀行が本当に巨額の不良債権を抱え込んでしまったこと、とクルーグマンは指摘している。だからFOMCがいくら金利を下げようが解決には向かわない、と。各金融機関が抱える損失を明確にし、その処理が可能であると市場が認識するまで、この危機は続くそうな。やれやれ。

今日のポイント

流動性(Liquidity)」と「支払能力(Solvency)」を取り違えてはいけません。