債券保証という無茶な商売
債券保証(Bond Insure)という商売が存在する。債券保証が危機に直面という記事から抜粋:
債券保証会社は、住宅ローン担保債券や、債務担保証券(CDO)と呼ばれる債券が組み入れられた複雑な投資商品に対する保険を、銀行や主要投資家に対し販売している。この保険の目的は、証券がデフォルト(債務不履行)になった場合に投資家を保護することにある。
そもそも、この債券保証という商売って成立するのだろうか? そりゃ、景気が良くて債務不履行が発生しないうちはいいよ。徴収する保険料は丸々債券保証業者の懐に入る。でも、一旦景気が悪化して債務不履行が始まったら... 補償する額が半端ではないので、あっという間に資本は細っていく。
再び前述の記事より:
ニューヨークに本拠を置くACAの年間収益は5億ドル未満で、株主資本はわずか3億2600万ドルである。保証しているCDOが焦げ付いた場合の支払準備金として、10億ドルを確保していると同社は主張する。同社がこれまでに販売した保険契約は160億ドル近くに上っており、その多くはここ数年間で発行されたCDOを保険対象とするものだ。
eTradeは不良化したCDOを額面の27%で処理していることから、近年発行されたCDOの債務不履行率は軽く50%を超えるとみてよいだろう。となると、上記ACAは明らかに資金不足だ。
そして、この債券保証会社が「ワタシタチガホショーシマース」と太鼓判を押しているから、AAAやAA格を維持できている金融商品も少なくないらしい。
Doubts on $1.2 Trillion of Debt(1.2兆ドル債務の不安)という記事は債券保証業の全体像を取り上げている。
- 債券保証業界全体で保証している債務は1.2兆ドル(135兆円)[*1]
- 債券保証業界全体の準備金は...恐ろしいほど足らない。
何より恐ろしいのは、これらの債券保証業者の格付けが保証先債券の格付けに直結されていること。仮に、大手のFGICやMBIAの格付けが下がったら、その保証先債券の格付けも下がり、それら債券を保有する機関投資家は機械的に売却せざるを得ない。そして、ABCPなどの市場は流動性低下で機能を停止しているので、eTradeの時同様に「叩き売り」になるのは確実。叩き売りしたら、当然多額の損失を計上することになる。関係金融機関の株価はまた下がるし、貸し渋りや貸し剥がしが加速する...
そして、Moody'sやFitchはFGICやMBIAに対して、昨日「格下げ」警告をしたそうな。なんか、時限爆弾のスイッチを入れられた気分。
今回の証券化バブルの一因は、これらの債券保証業者と格付け制度にあるような気がしてきた。
*1:同記事の引用先見出しが間違えているらしく、実際はこの倍の2.4兆ドルらしい