津波が押し寄せてくる

Mr. Mortgage: April Home Sales Rise! But Not as Fast as Inventories

  • DataQuickの調査によれば、4月の住宅販売件数は前月比26.8%増加&前年同期比10.9%減少。
  • 問題は...販売する二倍の勢いで、抵当流れ(Foreclosure)物件が発生していること。
  • 実際、4月に販売された住宅のうち37.7%はREO(銀行保有物件)。件数にして11750件。
  • 銀行は、ただでさえ痛んでいるバランスシートに不良資産を載せたくないから一刻も早くREO物件を売りたがる。要は叩き売り。
  • この叩き売りにより、周辺の同様物件の評価価格も下がってしまう。そして、評価価格が下落することで、ローン返済を止めてしまう人がでてくる。悪循環。
  • そして、4月に銀行が押さえることになったREO物件は22324件。投売りにも関わらず、販売できたのは上記のとおり11750件。10574件はまだ銀行のバランスシートに乗ったまま。
  • で、4月に銀行が接収した22324件の多くは、昨年12月にNOD(Notice of Default: 不渡り)が通知された33000件から来ている。
  • NODから三ヶ月で約6割が差押え。そして、NODの件数は下記のとおり順調に(?)増加している。
    • 2008/1...38,600
    • 2008/2...37,300
    • 2008/3...42,700
    • 2008/4...44,100
  • この勢いが維持されるのなら、向こう数ヶ月の間に銀行は113,400件のREO物件をバランスシートに抱えることになる。金額にして推定470億ドル=5兆円弱。
    • 大盤振る舞いで叩き売りすれば、これら在庫は捌けるかも知れないが、周辺住宅価格の更なる下落で、さらに新たな抵当流れを生み出す。また、叩き売りによる損失は現実損。評価損ではない。株価下落圧力。
    • 叩き売りせず、バランスシートに残しても大規模な資本増強は必須。もう優先株発行は規定一杯なところが多いので、普通株でやるしかない。希釈化でさらなる株価下落。
    • かといって、資本増強をしなければ貸し渋りが進行して信用収縮は加速。

詰んでますな...でも問題はまだある。

Housing Wire: Inside Look: Real Estate Owned Gets Jumbo-Sized

  • 以前はこの手のREO物件は、いわゆる「しょうもない」家が主流だった。ガラの良くない地域で、ぼこぼこに痛んだ物件。そういう感じ。
  • そこまでひどくなくても、Fannie/Freddieが引き取る「417,000ドル」を越える物件がREOになるのは珍しかったらしい。
  • が、最近になって「高級住宅」のREOが増えているのだという。
    • 2007/4月にREOから販売された417,000ドル以上の物件数は27
    • 2008/4月は、なんと173
  • これは販売件数であって、実際に銀行がどれくらいの高級REOを抱えているのかは不明。上記Mr. Mortgage記事の傾向があてはまるのなら、少なくとも販売件数の倍くらいのREOを抱えているはず。

この「高級REO物件」増加は銀行にとっては非常に痛い。価格が高いのでバランスシートに載せるには重過ぎる。50万ドルの家を一件載せたら、25万ドルの家を二件叩き売らなければならない。そして、高級物件は維持管理費用や、固定資産税の負担も重い。かといって、高級REOを投売りしたら、市場がもっと混乱する。 だから、銀行はこれらの案件処理に相当な人的資源を投入しているはず。 その分、低級(笑)な物件は外部業者に丸投げしているのであろう。

いずれにしても、住宅市場は当面回復しないし、金融市場の動揺はおさまりそうにない。 次の波は昨年8月の衝撃とは比べ物にならないのではなかろうか。