Conventional Wisdom(世間一般の通念)
MinyanvilleにConventional Wisdomという良記事があったので例によって無断かつ適当に速攻意訳。書いたのはMr Practicalというペンネームの人。1990年代に日本に住んでいたんだってさ。
世間一般の通念
Mr Practical 2009/01/05「景気後退」はより多くの消費を通して吹き飛ばすことができる、と世間一般では信じられている。今度の一兆ドルの景気刺激対策も、「経済にショックを与える」正しい方法であり、米国経済を再び成長軌道に乗せるためには必要なことだ、と評論家は言ってるよね。（たぶん、経済は危篤状態であり、まずは目を覚ます必要があるんだろう）
銀行預金の利率は0.15%だ。実質ゼロといっていいだろう。銀行の人に「なんでこんなに利率が低いの？」と聞いてみるがよい。そいつはたぶん、銀行の貸出利率が低すぎるからだ、と答えるだろう。貸出利率がとても低いのは、FRBがそうさせているからだよね。FRBは庶民が貯蓄しないように仕向けているわけだ。
今回の景気後退は、通常の景気後退とはわけが違う。長年にわたって、小さな調整ともいえる景気後退を避けるために、無茶な金融政策を続けてきたわけだけど、その過程で膨らみあがった信用バブルが最高潮に達して、崩壊したのが現状だ。より多くの消費で景気後退を吹き飛ばせるという考え方は、過去20年間に渡ってずっと間違っていたわけだ。それが明確になったのが、この20週間だった、とも言えよう。
でも、「負債が大きすぎる」という根本的な問題を理解できない経済学者や政治家達は、さらに多くの借金を重ねることで問題を解決しようとする、というのもまた悲しいくらい見え透いた展開なんだよね。2009年、米国はあらたに2兆ドルの国家負債を抱えることになる。そして、そのツケは我々の子供達に回されるわけだ。国家の負債が大きくなればなるほど、政府も巨大になる。政府が巨大になればなるほど、その権力も大きくなっていく。
世間一般の通念こそが、我々の通貨を破綻させる方向に導いているのですよ。通貨が破綻するとどうなるか？ 経済の視点で見ると、通貨が国家をまとめている、ともいえる。通貨が機能しなくなったら、経済も社会も崩壊する可能性がでてくる。
政府が雇用を創造することで、人々の財布には多少の現金が入り込んでくる。そしてその現金の価値はどんどん減って行き、一方で国家の借金はどんどん膨れ上がる。そして政府が生み出す仕事なんてのは、非効率的なゴミばかりだ。連邦政府はこの時点で打つ手なし、となる。官僚達には雇用創造のための判断をできるような能力など備わってない。もちろん、彼らはそんな事実は認めようとしないけどね。本当の解決策には、権力の分散と政府権限の削減が必要なんだよ。
問題の本質は、アメリカには貸し出しの原資となる貯蓄がまったくない、ということだ。その原因は長年にわたるFRBの間違った金融政策にある。自身が生み出したこの問題を「解決」しようとして、FRBはそのバランスシートを縮小させず、むしろ膨らまし続けている。この国の銀行システムは長年にわたった悪弊によって崩壊したままだ。FRBにできるのは、壊れた銀行システムが抱える負債をFRBがリスクを請け負うことで国家負債に移し変えることだけだ。そして、このリスク請負にしても損失を生まない可能性は排除できない。FRBは輪転機を回して紙幣を印刷し始めることもできるからだ。
バランスの取れた経済というのは、負債と釣りあうだけの貯蓄が必要なのだ。これは基本中の基本だよ。この基本から逸脱する解決策は、問題を悪化させ、長年かけて子供達にツケを回すだけだ。長い年月をかけて負債を削減し、貯蓄を増やし、両者のバランスが取れるようにする必要があるんだ。
でもね、政府がやろうとしている解決策はまさにこの反対なんだよ。政府は金利をゼロに下げることで、よりお金を借りやすくさせ、貯蓄する意味を失わせ、どんどん消費させようとしている。馬鹿げた考えだよね。
我々国民は、もっと論理的に考えなければならない。まず、やらなければならないことが二つある。まずは貯蓄の奨励。（ゼロ金利ではだめだよね。）そして生産性向上。（政府には生産性という概念はない。民間市場だけが生産性向上を達成できる。）
我々国民は、金利の上昇を許容する必要がある。そうすることで、貯蓄率が向上するからだ。政府の支出は95%削減させよう。結果として、税率も95%下げられるはずだ。そして政府の権力を中央集権から地方分散にさせる必要もある。短期的には、こういった活動は痛みを伴う。だけど、長い目で見れば...我々の次の世代もこの国自体も、ずっとずっと良い体質になるはずだ。
残念なことに、今述べたような話が実現することはあり得ない。今度の政府が巨大な「景気刺激策」を持ち出してくるのは確実だ。私が新しい大統領にお願いしたいのは、教育部門への支出である。子供達にツケを回す以上、その借金は子供達のために使われるべきではなかろうか。
まあ、結局のところは、我々有権者が権力を託したお偉方が、米国の通貨を完全に崩壊させることになるんだろうけどね。
