問題解決には、まず正常状態を理解することが必要

The Big Picture久々の感動書き込み。Bernanke Still Does Not Understand Credit Crisis(Bernankeはまだ信用危機を理解していない)

  • TBPのBarryが「住宅バブルを起こしたのは先代グリーンスパンの低金利政策ではない」という主張にケチをつけている。

As I have argued in this space for nearly 2 years, one cannot fix what’s broken until there is a full understanding of what went wrong and how. In the case of systemic failure, a proper diagnosis requires a full understanding of more than what a healthy system should look like. It also requires recognition of all of the causative factors — what is significant, what is incidental, the elements that enabled other factors, the “but fors” that the crisis could not have occurred without.

私(Barry)は二年前から主張しているが、ある壊れたモノを修復するには、なぜ・どうやって壊れたかを十分理解する必要がある。破綻したシステムが対象であれば、そのシステムが健全な状態とはどんなものなのかをしっかりと理解する必要がある。その上で、原因要素を全て分析するわけである。主要因は何か? 偶発的要素は? 他の原因要素を引き起こしたものは? 「これがなければ危機は起きなかった」要素群は?

  • その上で、Barryは「Fedが長期間続けた低金利政策が、債券投資マネージャ達に与えたプレッシャーが信用危機につながっていった」と分析している。

1. 超低金利政策は、債券投資マネージャ達が高金利商品に走るきっかけとなった。


2. 一方で、規制対象外の貸手専門ノンバンクがいて、そいつらはガンガンサブプライム住宅ローンを貸し付けた。こいつらはそのローンを証券化業者に売るためだけに存在した。


3. これらノンバンクはサブプライム債権を売ることが目的であり、自分で債権を保持することはほとんどなかった。結果として、貸出基準は大甘となり、どんどん貸出は増えた。


4. こうした与信の甘いローンは事実上ジャンク債でしかなかったが、証券化するために大量にウォール街の金融機関に買われていった。


5. 三大格付け機関(Fitch, Moody's, S&P)は、これらジャンク相当の債権にAAA格を与えるという大規模な不正を働いた。


6. こうして投資適格となったジャンク債は、高利回りを求めていた債券投資マネージャ(項番1)達の目にとまった。Fedが低金利政策を続けていなかったらたぶん見向きもされなかった代物だ。


7. 大きくレバレッジかまし投資ファンド群が大規模な証券化形成を許してしまった。さらに投資銀行達が、こうした証券化商品を大量に買い上げていった。


8. デリバティブ市場ではさらなるレバレッジがかけられていった。AIGみたいなところが、3兆ドルにものぼるデリバティブのポジションを立てたわけだ。


9. 金融機関の報酬体系は非対称である。利益は従業員に優先配分されるが、損失は株主(時に納税者)がかぶるようになっている。結果として、従業員達はリスクが高い投資にも手を出しやすくなる。


10. これらの構造を支えていた住宅市場が崩壊すると、全てが破綻する。

  • 「もしFedが異常な低金利政策を続けなかったら、高金利商品の需要もなかったはず」というBarryの主張は正しいと思われる。
  • そして、再び低金利政策を続けようとしているBernanke議長が「問題の本質を理解していない」という指摘も、おそらく正しい。