HAMP借換え=Fail

自分は政治家を全く信用していない。そもそも彼らには問題解決能力がない。特に、解決に際して痛みを伴う問題ではその傾向は顕著である。痛みは政治家に対する批判を生み、次回選挙での得票に影響を与えるからである。従って彼らは問題の根本的解決はせず、痛みを先送りする政策に走るのが常である。

その典型例とも言えるのが米国の住宅バブル崩壊後における債務者「救済」政策の数々。特にオバマ政権で鳴り物入りで登場したHAMP(Home Affordable Modification Program: ローン借換え支援)は散々な状態なのだが、その「ひどさ」を取り上げたブログ記事二つを紹介したい。

Rolf Winkler: Unsustainable Mods(持続不能な借換え)

  • 財務省が発表した3月のHAMP実施状況に突っ込んでいる記事。
  • 昨年夏の開始以降、HAMPでローン借換えできたのは累積で230,801件。
  • 3月だけで約6万件の増加。
  • だが、デフォルトした借手は700万件。デフォルトしそうな借手は500万件いるのである。合計1200万。
  • 1200万中、借換えできたのが23万というのは、とてもじゃないが成功とは言えない。約2%。
  • その借換えも、借手の負担を軽減するとはいえない代物。
  • 自分がとても驚いたのはこの表。

  • 一行目のFront End Debt-to-Income-Ratioとは、総収入に対する住宅ローン返済額の比率。HAMP借換え前は44.8%。借換え後は31.0%。→収入に対するローン返済比率が31%というのは、まあやっていけないこともない。
  • 問題は二行目のBack End Debt-to-Income-Ratio。こちらは、住宅ローン返済額に加えて、ホームエクイティローン返済や車のリースなど、その他のローン返済も含めた総額と、総収入の比率。HAMP借換え前は77.5%!! 借換え後でも61.3%!!
  • これでは生きていけない。
  • HAMP借換えをしても、一年以内に再デフォルトするのも当然だ。

The Mess That Greenspan Made: The Government’s Loan Mod Bizarro World(理解不能な政府の借換え支援)

  • 前述のRolf Winklerと同じく、財務省発表のHAMP状況につっこみをいれている。
  • が、こちらは2月の発表との比較をしているのであった。
  • 2月の表はこんな感じ。

  • 2月時点では、Back End Debt-to-Income-Ratioは借り換え後で59.8%だった。
  • 3月で61.3%に悪化した、と。
  • ところで3月にHAMP借換えできたのは60,000件。
  • この6万件がDTIを1.5%押し上げている→つまり、この6万件の借換後DTIは平均65%!!
  • それだけ再デフォルトする確率は高い。