粗い統計から中国の景気を占う(RGE Monitor)
Roubini Global Economics: China Auto Sales: What's the Deal?
中国の自動車販売台数に疑問を投げかけている内容。統計が間違っているか、この後大幅な調整が待っているか、ということ。中国の自動車販売統計はCATRCとCAAMの二種類がある。CATRCは小売台数、CAAMは卸し台数。卸し台数と小売台数とは、時間差はあっても同じような動きになるはず。巨大な在庫循環がない限り、ね。(Unless there is a gigantic amount of inventory rotation)
CATRCによれば、
- 2010年7月の自動車小売台数は822,300台。前年同期比+15%。
- 2010年8月の自動車小売台数は977,300台。前年同期比+59.3%。すごい伸び。
卸しのCAAMによれば2009年8月の卸し台数は858,278台。2008年同期比+70%!!
- 2010年8月のCATRC小売台数がy/y+59.3%で977,300台だから、2009年8月小売は613,496台販売していたことになる。
- 2010年7月のCATRC小売台数がy/y+15%で822,300台だから、2009年7月小売は715,000台販売。
→疑問: 販売台数が一ヶ月で10万台弱減少するような中で、卸し台数が前年同期比70%増加するようなことってあるのだろうか?
もちろん、RGEは「あり得る」として分析を続けている。If just barely(可能性はとても低いけど)という注意書きつきで、ね。去年の上半期は、政府による購入補助のおかげで小型車が圧倒的に不足した。結果、2009年8月にディーラーに並ぶ車の台数は少なかった。その分、今年の小売販売台数が大きく伸びたという説明は可能、ということ。
とはいうものの、この数カ月、CAAM卸し台数とCATRC小売台数の乖離が拡大していることをRGEは気にしている。
- 2010年6月のCAAM卸し台数は1,042,818台。CATRC小売台数は839,228台。
- 7月と8月は、小売台数より卸し台数が519,710台多い。つまり在庫は積み上げ圧力がかかっている。
- だが、CATRC発表によれば8月の在庫は57日分で、58日分から減っている→価格を下げて小売販売を加速させているようにも見える。
If this is the case, the 60% pace is not sustainable (if it’s even accurate), and it signals future weakness in demand and producer margins, not resilience.
だとしても、年率59.3%増という販売ペースは持続不能だろう。(統計が正確であったとしても、だ。) そしてこの数字は将来の需要低迷とメーカーの粗利低下を示唆している。
中国の統計はあてにならない
紹介した記事、公開直後はChina Auto Sales: WTF?という題名だった。WTF=What's the fuck、とややお下品な表現。痕跡はURLに残っている→http://www.roubini.com/asia-monitor/259570/china_auto_sales__wtf_
微妙な書き方ではあるが、中国の自動車販売統計に疑問を投じているのは確か。そもそもの統計がいい加減かもしれないと言ってるようでもあるし、"Unless there is a gigantic amount of inventory rotation"という記述にあるように、ディーラー間で在庫の付け替えを行って「販売」の数字を立てちゃっているんじゃないの? と言っているようでもある。
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