なんだったんだこの二年

選挙が近づいてきたこともあり、改めて米国の住宅政策が色々問われている。

Christian Science Monitor: Tax credits for homebuyers: the downside of stimulus

住宅市場てこ入れのために導入された「初回住宅購入者への税戻し(Tax Credit)」。2009年に税戻しを受け取った180万世帯のうち、半分以上の95万世帯は、政府にお金を返す必要がある。これは最初から決められていた話で

  • 2008年に購入した場合は、最大7500ドルの税戻し。ただし、15年以内に政府に返済する義務あり。
  • 2009年に購入した場合は、最大8000ドルの税戻し。3年間家を売らなければ政府に返済する必要はない。

だが、IRS(合衆国歳入庁)によれば、2008年購入か2009年購入かを区別するのはなかなか難しいらしい。財務省の監査によれば、税戻しを受けた世帯のうち約4%にあたる73,000世帯の住宅購入日が、IRS側で間違って記録されていた。また、2009年に購入したと申告した73,000世帯のうち60,000世帯はIRSにより2008年購入と記録されていた。

こうした申告間違いや手続き間違いの他に、明らかに税戻し詐取を狙った申請もある。CNN記事は、すでに死亡届がだされている1,326人が税戻しを申請している話を伝えている。詐取は論外だが、手続き間違いや申告間違いで過払いした分はしっかりと回収する必要がある。

つまるところ、この税戻し政策は住宅市場回復にはたいして寄与せず、むしろ副作用のほうが多かったのではないか、と記事は指摘している。

  • IRSは税戻しを正しく適用するために人員を強化する必要がある。その分予算も膨れ上がる。
  • 2009年購入申請だが、IRSにより2008年購入と記録されている人達の扱い。一件一件確認する必要あり。
  • このような税戻しが復活するのではないかと期待している人達は、家の購入を控えてしまっており、住宅市場は深刻な落ち込みをみせている。

ABCNews: Tampa Bay home prices hit 10-year lows in August, report says

フロリダのタンパベイの住宅価格は引き続き下落し、この10年間で最低の水準に。上記税戻しで$8,000受け取った購入層は、平均して$13,000の下落をくらっている。

Time: The Case Against Homeownership

Time誌が、米国の持ち家推進政策を批判している。長い長い記事だが、「個人が家を保有することによる問題点・個人に家を持たせることによる政府の不利益」を鋭く指摘している。

家を持つことは長いことアメリカの「標準的な夢」だったようだが、変換点が来たということだろうか。