中国住宅バブルの正体を分析した記事

masayang2010-09-18

中国の住宅市場はバブルかどうかという議論は中々単純ではなくて、「現金で買っている人が多いから仮に価格が下落しても、ドミノ倒し的な信用不安は発生しない。だからバブルじゃない」みたいな見方もある。一方で、平均的な労働者には手が届かない価格の住宅は投資家が購入しても空き家のまま、という話もありそれってバブルじゃないの?という見方もある。どっちなのだろう?

Why China's Housing Bubble Is Unsustainable(中国のバブルが持続不可能な理由)→例によって適当に訳

米国主要メディアが中国の住宅市場を分析する場合、二つの見方がある。

  1. 中国の住宅需要は底固いので、供給過剰ということはなくやがて物件は売れていく。
  2. 米国で見られたのと同様な、政府による安易な信用供与が住宅バブルを生んでいる。

一番目の見方はあまり支持されていない。目視検査では北京・上海のアパートの半分は空き家(もしくは暗闇で過ごすのが好きな人)。電力会社の調査では、中国全土での空き家は6400万件に上り、ほとんどは投資目的での保有らしい。

かといって、二番目の見方も正しくはない。中国における住宅バブルの原因を説明できていないので、誤解を招いてしまう。

→ではどういうことなのだろう? 記事を書いたCharles Smith氏は、中国の知人を通じて調査したようだ。

2004年、平均的な労働者共稼ぎ夫婦の収入が$10,000相当だった頃でも、彼らは投資用に1〜2件、多い場合は3件のマンションを買うのが珍しくなかった。これらの物件を賃貸に出す人はほとんど存在しなかった。賃貸に出せば物件の価値が下がるし、忙しいから大家さんみたいな作業する時間もない。固定資産税は存在しないし、維持費は月$100かからない。だったら、そのまま寝かせておけば良い、ということだ。

だが、なぜ中国の人達は貯金のほぼ全額をこういった不動産投資にぶち込んでしまうのだろう? まず他に投資先の選択肢が少ない。株はちょっと前のバブル崩壊で怖い。一般人は海外ファンドへの投資が許されていない。そして不動産は株に比べて二つの利点がある。まずは、いざという時には住めるというわかりやすさ。二つめは、中国の物価上昇率を越える勢いで価格があがっていること。

そしてなにより、中国の銀行預金利息ではインフレヘッジにならないのだ。

さらに付け加えれば、中国の人達は不動産投資に「中央政府プットオプション」がかけられていると信じている。党・政府は不動産価格の下落を許すはずがない、と。その願いが本当かどうかは歴史が証明するであろうが、確実に言えることは鍵を握っているのが地方政府ということだ。中央政府が動かしている銀行ではない。

中国の住宅市場はこんな感じで考えると良い。

  • 土地は全て市や郡が所有
  • 建設業者は、土地を長期借用し、その上にマンションを建てるしかない。
  • 市・郡の税収の40%はその借地代からあがってくる。
  • そして住宅バブルが起きて土地価格も借地代も上昇。
  • 市当局はうっはうは。

建設業者は民間出資だけど、資金を融資する金融機関は実質地方政府の配下にあるわけだから、ほとんどやり放題である。建設業者は、地方政府配下の銀行から低金利で借入を受け、住宅を建てて、庶民に高く売って、借地代を地方政府に払い続ける。地方政府の財政は潤い、その資金が銀行に還流し、さらなる融資に回って...以下繰り返し。

もちろん、この構造は「これ以上建てても売れないから建てられない」ことが判明した時点で破綻する。その場合、運転資金を低利融資に頼ってきた建設業者と、そこに貸し付けてきた銀行との間で強烈なレバレッジ解消が発生する。この損を被るのは一般労働者だろう。高値で掴まされた物件は価値が下がる一方で、地方政府出資の空けた穴の補填もしなければならない。それは長くて痛みを伴う過程となろう。

Based on the accounts provided by these analysts, Chinese taxpayers will soon have common ground with their American counterparts: they'll be stuck paying for the bail-out of private developers and government–controlled banks (which in the U.S. are called Fannie Mae and Freddie Mac).

アメリカのFannie/Freddieに相当するのが、中国地方政府配下の銀行と建設業者、という構図。

どうなるんだろ

あとはいつ崩壊が始まるか、だけなのかな。意外と持つかもしれんし、始まったら一気かもしれない。フォーブスも警鐘を鳴らしているね。→ソース