オフショア vs Agile

Optimal Frictionのこの記事から、New York Software Process Improvement Network(SPIN)というグループを知る。このサイトに登録されている2月の会合での発表資料(PDF形式)が興味深い。Agile開発(XP)、従来型開発(国内)、従来型開発(オフショア)の生産性を比較した資料が掲載されている。
生産性はSLIM Metricsという手法で比較。

Agile(XP)と従来型国内開発の比較(同一業種の開発で比較)

業界標準 XP 比率
プロジェクトコスト $3.5M $2.4M $1.1Mの改善
納期 12.3ヶ月 8.7ヶ月 3.6ヶ月の改善
累積不具合数 2702 1372 半減
人数 33 33

Agile(Industrial XP)と従来型国内開発の比較(同一チームの開発で比較)

従来型開発 XP転換後 比率
プロジェクトコスト $2.8M $1.1M 61%
納期 18ヶ月 13.5ヶ月 24%改善
累積不具合数 2270 381 83%改善
人数 18 11 39%改善

オフショアと従来型国内開発の比較(同一業種で比較)

従来型開発 オフショア 比率
プロジェクトコスト $3.5M $3.2M $0.3M改善
納期 12.3ヶ月 9.6ヶ月 2.7ヶ月改善
累積不具合数 2270 7565 2.8倍に悪化
人数 33 50 17名増加

これらの数字が語ることは以下の二点。

  • オフショア開発はそれほど安くない。そして品質は悪化する。
  • Agile開発はコストと納期の改善もさることながら、品質向上という効果が大きい。

資料を提供しているQSM社は様々なプロジェクトの実績指標を取得して統計を取っているので、上記数値は現実を表していると思ってよいだろう。

冒頭に挙げた記事によれば、New York SPINグループはこういう発表をするミーティングを月例で行っているそうな。その会場一覧を見ると

  • Bank of America
  • JP Morgan Chase
  • Citigroup

などという金融系企業が並んでいた。そういう所のCEO/CIO/CFOが、SPINのミーティングに参加するのだという。システム投資に対する経営陣の認識レベルが日本の企業と別次元なのねん、と納得。

おまけ

前述スライド(PDF形式)には、XP開発現場の写真も掲載されている。日本のデジタルタコ部屋を見慣れた人たちには不気味に映るかも。