シートベルトをお締めください
Housing Wire: OCC Chief Warns on Second Liens
- OCC=Office of the Comptroller of the Currency:通貨監査局
- そのOCCが各銀行に対し、ホームエクイティローン貸し倒れに備えた積み増し金を増強するよう警告を出した
- 2007年第一四半期のホームエクイティローン貸し倒れは2億7300万ドル
- 2008年第一四半期のホームエクイティローン貸し倒れは24億ドル...前年同期比で9倍に増加
- 3月以降、さらにホームエクイティローン貸し倒れが増えているのは確実
(追記)ホームエクイティローンは第二抵当の地位にあるので、実質無担保と思ってよい。したがって、貸し倒れは100%現実損となることに注意。
Naked Capitalism: Monoline Death Watch: FASB Imposes Strict Rules On Loss Reserves
この道はいつか来た道
FT: Top banks call for relaxed writedown rules
Under the plan, which has been obtained by the Financial Times, banks that decided to keep assets on their balance sheet would also be freed from the requirement to hold them to maturity and would be able to sell them after two years.
- 長期間で回収する塩漬け資産として計上する考え方は許されるかもしれないが、「二年間保有後は、売却可能」というのは虫がよすぎる。二年間は長期とはいえない。
- 二年後、市場が回復していたら売ればよいと経営陣が考えているのが見え見え。
- この動きは、日本がバブル崩壊で負った傷を深めた時と同じ。損失を隠して時間を稼ぐ間にさらに市場が低迷すれば、傷はさらに深くなる。
“Often dramatic writedowns of sound investments required under the current implementation of fair-value accounting adversely affect market sentiment, in turn leading to further writedowns...in a downward spiral that may lead to large-scale fire sales of assets,” the IIF’s paper argues.
- 時価評価下落による損失計上が株価下落を呼び、それが市場に悲観的観測を与えてさらに資産価値が下がる。だから時価評価会計は悪だ、と銀行団体は主張しているらしい。
- でも、時価評価上昇による利益計上が株価上昇を呼び、それが市場に楽観的観測を与えてさらに資産価値が上昇したときのことは忘れているのね。
- 虫がよすぎる連中だ。まあ、金融機関の経営者なんてその程度のもんなのかもね。
本件に関して、Mr. Mortgageが辛辣な指摘をしている
Great idea! When this is instituted, they should all ‘historically value’ our homes at 2005 levels and let’s us all do cash-out refinances!
資産を取得時価格で評価できるのであれば、2005年頃に住宅を購入した人達の資産価値も上昇するから、借換えが楽になる。
もちろん、銀行がそんな融資をするわけがない。いかに今回の提案がばかげているかがわかるでしょ。それだけ銀行は追い込まれているということでもある。
津波が押し寄せてくる
Mr. Mortgage: April Home Sales Rise! But Not as Fast as Inventories
- DataQuickの調査によれば、4月の住宅販売件数は前月比26.8%増加&前年同期比10.9%減少。
- 問題は...販売する二倍の勢いで、抵当流れ(Foreclosure)物件が発生していること。
- 実際、4月に販売された住宅のうち37.7%はREO(銀行保有物件)。件数にして11750件。
- 銀行は、ただでさえ痛んでいるバランスシートに不良資産を載せたくないから一刻も早くREO物件を売りたがる。要は叩き売り。
- この叩き売りにより、周辺の同様物件の評価価格も下がってしまう。そして、評価価格が下落することで、ローン返済を止めてしまう人がでてくる。悪循環。
- そして、4月に銀行が押さえることになったREO物件は22324件。投売りにも関わらず、販売できたのは上記のとおり11750件。10574件はまだ銀行のバランスシートに乗ったまま。
- で、4月に銀行が接収した22324件の多くは、昨年12月にNOD(Notice of Default: 不渡り)が通知された33000件から来ている。
- NODから三ヶ月で約6割が差押え。そして、NODの件数は下記のとおり順調に(?)増加している。
- 2008/1...38,600
- 2008/2...37,300
- 2008/3...42,700
- 2008/4...44,100
- この勢いが維持されるのなら、向こう数ヶ月の間に銀行は113,400件のREO物件をバランスシートに抱えることになる。金額にして推定470億ドル=5兆円弱。
詰んでますな...でも問題はまだある。
Housing Wire: Inside Look: Real Estate Owned Gets Jumbo-Sized
- 以前はこの手のREO物件は、いわゆる「しょうもない」家が主流だった。ガラの良くない地域で、ぼこぼこに痛んだ物件。そういう感じ。
- こういうのとか...
- そこまでひどくなくても、Fannie/Freddieが引き取る「417,000ドル」を越える物件がREOになるのは珍しかったらしい。
- が、最近になって「高級住宅」のREOが増えているのだという。
- 2007/4月にREOから販売された417,000ドル以上の物件数は27
- 2008/4月は、なんと173
- これは販売件数であって、実際に銀行がどれくらいの高級REOを抱えているのかは不明。上記Mr. Mortgage記事の傾向があてはまるのなら、少なくとも販売件数の倍くらいのREOを抱えているはず。
この「高級REO物件」増加は銀行にとっては非常に痛い。価格が高いのでバランスシートに載せるには重過ぎる。50万ドルの家を一件載せたら、25万ドルの家を二件叩き売らなければならない。そして、高級物件は維持管理費用や、固定資産税の負担も重い。かといって、高級REOを投売りしたら、市場がもっと混乱する。 だから、銀行はこれらの案件処理に相当な人的資源を投入しているはず。 その分、低級(笑)な物件は外部業者に丸投げしているのであろう。
いずれにしても、住宅市場は当面回復しないし、金融市場の動揺はおさまりそうにない。 次の波は昨年8月の衝撃とは比べ物にならないのではなかろうか。
連絡事項
メールやMixiのメッセージでいろいろ問い合わせを受けるので、まとめて連絡。
問い合わせには応じるかもしれないし応じないかもしれません
- 「ドル〜円は明日いくらになりますか?」
- 「○○の株はどうなりますか?」
- 「××市のほげほげstreetのこの家を買おうと思うのですが、価格はどうなりますか?」
→俺様は預言者じゃないっての。 こういう問い合わせには応じません。
- 「今後のドル〜円はどうなると思いますか?」
- 「米国経済は今後どうなると思いますか?」
→マクロ的な妄想なら、不定期にブログに書くので読んでください。
そりゃないよ
- 「ドルを買ったら損をした。賠償せよ。」
- 「株で損をした。賠償せよ。」
- 「我が家の価格が下がったのはお前のブログのせいだ。賠償せよ。」
→投資は個人の責任でやってよ。得したからといって、俺様になにかくれるわけじゃないでしょ? 損したときだけ他人に当たるのって変だと思わない? まあ、こういう人達に言えるのは「ざまーみろ」くらいか。
その他
- 知らない人からのMixi友達要請が多すぎるので全部断ってます。ごめんなさい。
- ブログコメントに、「なぞなぞ認証」なるものを設定したよ。さて、あなたは解けるかな?→普通、解けるわな(笑
さて、自転車乗ってこよっと。
理論株価算出お助けツール
株式取引の本を読むと、必ずP/Eの話が出てくる。日本だとPERと書く、あれだ。Price Earning Ratio。株価÷収益=PER。そのままやんけ。問題は...
- 将来の収益予測をどうするか
- 将来のP/Eをどう予測するか
これにつきる。
desighning better futures: Get rid of your recency bias to price the market
- この記事で面白いツール(Excelのシート)が紹介されている。URLは http://nickgogerty.typepad.com/designing_better_futures/files/SPDJIAPEriskfreeyieldpredictionV1.0.xls
- そのExcelを開いて、Simple Predictorと書かれているシートのスライダを調整するだけで理論株価を算出できる!
- P/Eは「リスクなし利率(Risk free rate)」+「株価リスク利率(Equity risk premium required)」に分離
- Risk free rateとは米国5年債の利回り
- Equity Risk premiumは、P/Eの逆数から上記Risk free rateを引いたもの
- 例えばP/E=20で、五年債利回りが3.1%なら、Equity Risk premiumは1/20*100 - 3.1 = 1.9となる
先週の終値で試してみる。
- Bloombergによれば5年債の利回りは3.13%
- WSJのページからSP500のP/Eは23.10
- 1/23.1*100-3.13=1.199がEquity Risk premium
- SP500終値は1375.93だったから、これにあうようにEarningのスライダを合わせると...株価は5%マイナス成長を見込んでいることになる。
- 実は年初来のSP500のEarningは、現時点ではマイナス25%。マイナス5%を達成するには、第二四半期以降急激に経済が回復する必要がある。
ここからはシミュレーション。
シナリオ1
- 基本的に現状と同じだが、P/Eが歴史的にみて「普通」な15まで低下
- 1/15*100-3.13=3.53% premium
→SP500理論値は$896。
シナリオ2
- 今後の米国債発行ラッシュで5年債の利回りが3.5%に上昇
- SP500のP/Eが、歴史的にみて高めの値(20)まで低下
- 1/20*100-3.5=1.5% premium
- 第二四半期以降の経済回復は弱く、マイナス10%成長
→SP500理論値は$1121。
シナリオ3
- 今後の米国債発行ラッシュに加え、Fannie Mae/Freddie Mac国有化で5年債の利回りが4%に上昇
- SP500のP/Eが、歴史的にみて低めの値(10)まで低下
- 1/10*100-4=6% premium
- 第二四半期以降の経済回復はなく、マイナス25%成長
→SP500理論値は$467。
いろいろ遊べるツール。今の株価は「第二四半期以降の急激な収益回復」を強く期待していることがよくわかる。期待が強いからP/Eも高い。この期待が消えるときに株価がどう動くかは興味深い。
また、国債の発行ラッシュで金利が上昇すると、理論株価は下がっていくことにも注目。今年度、すでに4500億ドルの財源不足な米国政府。どーすんだろ。