FHLBについてもうちょっとちゃんと書く

→昨日の[政治][経済][米国][住宅]シアトル連邦住宅貸付銀行(FHLB Seattle)に何が起きているのか?はいかにも手抜きであった。

そもそもFHLB(連邦住宅貸付銀行)とはなんだろう。日本語Wikipediaにも歴史的背景の説明はあるがここでは2007年10月31日Minyanville: Five Things You Need To Knowから抜粋:

  • 安易な貸出拡張と、その結果の大量不良債権が銀行の貸渋りにつながり、アメリカ国内に信用危機が生まれて始まった1930年代の大恐慌
  • 当時の貯蓄貸付組合等に資金を融通するためにFHLBが設立された。
  • 12地区のFHLBがあって、合計8000以上の金融機関が共同で保有
  • 各金融機関がFHLBの株式を保有する形。FHLB株は非公開。よってFHLBの財務はちょっと見えにくい。
  • いずれにしてもFHLBはアメリカの金融機関に「オンデマンド・低コスト」な資金を供給し、これらが住宅ローンの原資に使われた。

→銀行による銀行のための銀行が運営する信用組合、って言うところですかね。Wikipedia日本語にも書かれているけど、FHLB自身は「国債コマーシャルペーパー不動産担保証券、公社債」で資金を運用。会員銀行からCPやMBSを買い入れているわけ(CPやMBSを担保に会員銀行に貸し付けている)。CPやMBSを買い入れる資金はどこからでているか?当然...借りるわけですよ。

Bloomberg 2007年10月30日記事: U.S. Tosses Lifeline to Lenders Using Home Loan Banks

2007年夏、CountrywideとかWashington Mutualとかが非常にやばくなってきた状態で、FHLBに短期融資を求めた。ABCP金利が5.6%に跳ね上がる中、FHLBは4.9%という「低利」でこれらの銀行に資金融資。ちなみに利息だけで年間10億ドルに達していたはずの額。

この貸付資金調達のためにFHLBは1430億ドルの債券を発行している。要は「借りた」わけだ。こうして積み上がったFHLBの債務と、Fannie Mae/Freddie Macが抱える債務・債務保証を合計すると、2007年当時で米国国債発行総額よりも46%多かったそうな。その後3年で大きく変わったから今はどうだかわからんが...

FHLB=飛ばし先?

ここからは専門家の意見も聞きたいところ。

  • FHLBって、国が設立に関わった「不良債権飛ばし先」って呼んでも良いのでは? 連結対象外の会社に不良資産移しているだけにみえるんだけど
  • そのFHLBの一つ(シアトル)が資本基準を満たしていないということは、流動性(Liquidity)から支払能力(Solvency)に問題が移ってきた、ということにならないか?
  • FHLBが債券発行で資金調達できないのなら会員銀行に増資を依頼するしかないが、会員銀行も財務が厳しかったらやはり増資するしかないのでは?
  • 今の政局でこれ以上銀行救済政策を打てるとは思えんし。

という状況でインフレを心配するのはなんか間違っていると思うんだよね...

FHLB関連

Housing Wire 2010/3/22: San Francisco FHLB Sues Over Questionable Mortgage Investments
→サンフランシスコFHLBがAAA格RMBS(のちにクズとなった)を打ってきたドイツ銀行などを訴えた、という記事。

Housing Wire 2010/4/30: US FHLB system assets, advances fall in Q1
→FHLBの資産/立替が劣化しているよ、という記事。(立替については問題なし、とFHLB自身が反論)

Zerohedge 2009/11/10記事: Seattle FHLB - Toast