米国は本当に景気後退から抜け出したのか?

  • ちょっと興味深い記事。

Housing Wire: For Consumers, Time to Shop (Until the Mortgage Drops)

  • 各種指標では、米国消費が上向いているように見える。
  • その理由を推定した記事。

Put simply: people are spending their mortgages.

人々は住宅ローン返済分を消費にまわしているのである。

つまり...

  • 月々の返済をやめる。
  • 返済が3ヶ月滞った程度ではForeclosureで追い出されることはない。
  • 現在、Foreclosure処理されるローンの延滞日数は「平均で410日」。
  • つまり、1年は余裕で「家賃無料」の家に住めるのである。
  • Calculated Riskにて紹介された事例では、HAMPでローン借り換えを申請していた借主(返済額$1880/月)が30日間で下記の消費をしていたという話が紹介されている。
    • 日焼けサロン
    • ネイルサロン
    • 高級食材マーケットでの買い物
    • 酒屋でたくさん買い物
    • DirecTVで有料番組たくさん視聴
    • Best Buy, Baby Gap, Brookstone, Old Navy, Bed, Bath & Beyond, Home Depot, Macy’s, Pac Sun, Urban Behavior, Sears, Staples, and Footlockerなどで$1700以上の買い物
  • 住宅ローン延滞をしているのは全米で740万世帯。
  • 債務が家の評価額より多い「Underwater」な状態が500万世帯。
  • このうちのどれくらいの世帯が、前述のような「ヤケクソ」消費に走るのかはわからない。
  • 仮に延滞しているうちの半分=370万世帯が、月々$1000の返済を踏み倒して消費に回しているとすれば...アメリカは「毎月37億ドル(3400億円程度)」の「景気刺激」を受けていることになる。→結構な額である。

だが、こんなことがずっと続くわけでもない。毎月37億ドルの消費がある一方で、どこかで毎月37億ドルの「未収債権」が積み上がっていくのである。それがFannie/Freddieだったら、やがてはアメリカが(つまり納税者が)ケツを拭くことになる。増税という形で。

そしていずれは「家賃無料」の人達も家を追われることだろう。クレジットヒストリーががっくりと落ちるので向こう数年は家を買うことはできない。家賃を払って賃貸住宅に入るか、実家に帰って親と一緒に暮らすか、路上生活するか。いずれにしても、家賃タダの日々に比べれば消費は冷え込む。

この「増税」と「消費冷え込み」が同時にやってきたらどうなるの? バラ色じゃないよね? というのが、紹介したHousing Wire記事のしめくくりであった。