踏み倒しのお値打ち
不動産バブル崩壊後の米国では、住宅ローン返済を放棄するいわゆる「Walking Away」が増えている。その「踏み倒し」で、どれくらい生活が楽になるのか? Mish: Email From "Morally Conflicted" One Year Later After Walking Awayに興味深い報告が紹介されている。
- Walking Awayを選んだのは「Morally Conflicted」氏(仮名)。アリゾナ州スコッツデール在住。
- 2005年に74万ドルの家を、頭金4万ドルで購入。
- 1年前に収入が減少。返済は可能だったが、当時で既に家の価格は45万ドルに減少。失業したら家を売ってもローンが残る状態に。
- 結局、家のローンは払わずに、近所に家賃1200ドルのアパートを借りてそちらに転居。
- ローン借換ができていたとしても、月々1500ドルの節約。
- 当初のローンそのまま返済継続に比べれば、月々3000ドルの節約。
- 100ヶ月(8年半)で実に30万ドルの節約→今の相場が続けば確実に家を買える。現金で。
- もちろん、良い話ばかりではない。フォアクロージャを選択した、という事実はクレジットヒストリーにしっかりと残る。当面は借入が困難か、高い金利を払うことになる。数年は住宅ローンを組めない。
- だけど、月3000ドルの節約というのは大きい。
However, the irony is that if there has ever been a time in my life when I do not want to borrow any money for anything, it is now.
皮肉なことに、今まで生きていた中で今ほど借金不要と思ったことはない。
負の循環
住宅価格が上がり続ける、という幻想のもとでは多少の無理をしてでも住宅ローンを返済し続ける意味はある。だが、住宅市場が当面回復しそうにない中で債務超過に陥ったら、この記事にあるように「踏み倒す」選択が合理的であろう。そしてこのような選択をする人が増えれば、さらに住宅価格は下落していく。当然、米国政府や金融業界はこの動きを阻止しようとあの手この手を使うであろうが、価値が下がっていくものに投資するもの好きがどれくらい残っているだろうか。一旦膿を出しきらない限り、住宅市場の「底」は来ないのでは。